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高等裁判所 判例集

事件番号

 昭和36(ネ)793

事件名

 責任役員等確認請求事件

裁判年月日

 昭和41年4月8日

裁判所名・部

 大阪高等裁判所  第九民事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

 第19巻3号226頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一、 住職を寺院の機関としてその地位確認を求める訴えの適否
二、 寺院(宗教法人)の代表役員を定めるについての寺院と宗派(包括宗教法人)との相互規定が有効と認められた事例
三、 住職退職願いの効力が宗派管長の受理によつて生ずるものとされている場合における民法第九三条但書適用の基準日
四、 住職退職願いが非真意の故に無効であるときはすでにこれに基づいて後任住職が任命されている場合でもその無効を主張することができるか
五、 宗派管長は被包括法人たる寺院の住職の罷免権を有するか

裁判要旨

 一、 寺院規則上、寺院の責任役員、代表役員は当該寺院の住職をもつて充てるとされている場合であつても、住職を寺院の機関としてその組織法的な地位の確認を求めることは許されないと解するのが相当である。
二、 宗教法人たる寺院の規則に「代表役員は包括宗教法人たる宗派の規定たる宗制により任命されたこの寺院の住職にあるものをもつて充てる」と定められ、包括宗教法人の宗派規則に「末寺の代表役員は当該寺院の住職をもつて充てる」と規定されているときは、宗教法人法第一二条第一項第一二号に定める相互規定の要件を具備し、有効であると解するのが相当である。
三、 住職退職願いが宗派規則、宗制等の規程に照し、宗派管長の受理によつて効力を生ずるものとされている場合においては、右退職願いか非真意意思表示であることを知り、または知ることを得べかりし時期は、管長が退職願いを了知したときではなく、その後受理の決定をしたときであると解するのが相当である。
四、 寺院規則上住職が寺院の唯一の代表役員である場合において、住職のなした退職願いが非真意意思表示として民法第九三条但書により効力を生じないときは、たとえこれに基づいて善意の後任住職が任命されているときでも民法第九四条但書の準用はなく、退職の意思表示の無効を以て後任住職に対抗することができると解するのが相当である。
五、 宗派管長が被包括法人たる寺院住職の任命権を有し、住職が宗派と寺院の相互規定により当然代表役員に就任する場合にあつては、宗派ならびに寺院の規則に管長の罷免を認める規定がない限り、管長の住職罷免は許されないものというべく、したがつて宗教的な懲戒としての降階処分によつて住職の資格を剥奪しても、そのため住職たる地位が当然失われないものと解するのが相当である。

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