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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成9(行ウ)10

事件名

 開発行為許可処分取消請求事件

裁判年月日

 平成11年4月28日

裁判所名

 横浜地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 地方自治法252条の19第1項の指定都市の市長が都市計画法(平成4年法律第82号による改正前)29条に基づきした開発行為許可処分の取消しを求める訴えにつき,同処分に係る開発区域のがけの真上の位置に居住する者の原告適格を肯定し,同開発区域から尾根地を越えて南東方向へ約50メートルの位置に居住する者の原告適格を否定した事例 2 地方自治法252条の19第1項の指定都市の市長が都市計画法(平成4年法律第82号による改正前)29条に基づきした開発行為許可処分は同法(同改正前)33条1項7号,14号に違反するとしてされた同処分の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 地方自治法252条の19第1項の指定都市の市長が都市計画法(平成4年法律第82号による改正前)29条に基づきした開発行為許可処分の取消しを求める訴えにつき,同処分に係る開発区域内の土地はがけ崩れのおそれが多い土地等に当たるところ,同開発区域のがけの真上の位置に居宅を有する者は,がけ崩れ等によってその居宅に危険が生じ得るから,同人は,生命身体に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者であるといえるが,同開発区域から尾根地を越えて南東方向へ約50メートルの位置に居住する者については,その距離,がけの高さ及び地形からすると,同開発区域内におけるがけ崩れによる土砂が,尾根地を越えて同人の居宅の方向へ押し寄せるというまでの事態は考えられないし,同開発区域内におけるがけ崩れが同人の居宅上部のがけに影響を及ぼすとは認められない上,同人が同開発区域内でがけ崩れが生じた際に同開発区域直下の道を通りかかった場合にその生命身体に危険が生じる可能性があるとしても,同法(同改正前)33条1項7号の規定の趣旨・目的,同法規が保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮すれば,特段の事情のない限り,同号の規定は,前記開発区域直下の道を通りかかった場合の危険が想定される者の利益を,その個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできないとして,前記処分に係る開発区域のがけの真上の位置に居住する者の原告適格を肯定し,同開発区域から尾根地を越えて南東方向へ約50メートルの位置に居住する者の原告適格を否定した事例 2 地方自治法252条の19第1項の指定都市の市長が都市計画法(平成4年法律第82号による改正前)29条に基づきした開発行為許可処分は同法(同改正前)33条1項7号,14号に違反するとしてされた同処分の取消請求につき,都市計画法がその規制内容としているものは,開発行為の過程ではなく,開発行為の結果としての土地の区画形質の変更の状況であって,それが都市計画法の定める一定の基準を満たしている場合には,都道府県知事としては,かかる開発行為が法律上又は事実上可能であるか否かを問わず,開発許可をしなければならないと解するのが相当であるところ,前記開発行為は,都市計画法施行令等の技術的細目を満たしており,前記開発区域内及びその周辺の土地の地番が軟弱かつ滑りやすいものであるというような特段の事情は認められないから,前記処分は同項7号に違反するものではなく,また,同項14号は個々人の権利を保護する趣旨の規定ではないから,同号に違反する事実があっても,それは,前記請求に係る訴えを提起した者の権利利益を保護する趣旨で設けられたものではない法規に違反する事実があるというにすぎず,同人は,行政事件訴訟法10条1項により,同号違反の事実を取消しの理由として主張することはできないとして,前記請求を棄却した事例

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