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行政事件 裁判例集

事件番号

 昭和60(行ウ)12

事件名

 水利使用許可処分取消請求事件

裁判年月日

 平成7年1月30日

裁判所名

 名古屋地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 河川法23条及び24条に基づく水利使用許可処分につき,当該水利使用に係る事業によって洪水災害が発生するおそれのある地域に居住し又は財産を有する者は,同処分の取消しを求める原告適格を有するとした事例 2 電力会社が設置し水力発電の用に供していたダムについて,地方建設局長が河川法23条及び24条に基づいてした水利使用許可処分につき,市条例により第一種災害危険区域に指定された地域に農地を所有する者は,前記許可処分の取消しを求める原告適格を有するとした事例 3 電力会社が設置し水力発電の用に供していたダムについて,地方建設局長が河川法23条及び24条に基づいてした水利使用許可処分が,裁量権を逸脱又は濫用した違法なものではないとされた事例

裁判要旨

 1 河川法は,同法23条及び24条に基づく水利使用許可処分を行う要件,基準について明示の規定を置いていないが,災害の防止をその目的の一つとして定めた同法1条の目的規定,その他の関係規定に照らしてみると,河川管理者が前記処分をするに当たっては,水利使用に係る事業によって洪水等の災害の発生のおそれがないかどうかを考慮しなければならないことを定めているものと解すべきであるところ,水利使用に係る事業によって洪水災害を被るおそれのある者は,河川周辺の一定の地域的範囲に居住するか財産を有する者にほぼ限定され,その被る損害の内容は,財産権に対するもののほか,生命,身体に対するものであり,このような予想される洪水被害の性質等をも踏まえて考えると,同法は,水利使用許可処分をするに当たり,災害の発生防止を単に一般的公益として保護しようとするにとどまらず,河川の周辺に居住し又は財産を有する者の生命,身体又は財産をこれら個々人の個別的権利利益として保護すべきものとする趣旨を含むものと解することができるから,当該水利使用に係る事業によって洪水災害が発生するおそれのある地域に居住し又は財産を有する者は,前記水利使用許可処分の取消しを求める原告適格を有するとした事例 2 電力会社が設置し水力発電の用に供していたダムについて,地方建設局長が河川法23条及び24条に基づいてした水利使用許可処分につき,建築基準法39条に基づいて制定された市条例により第一種災害危険区域に指定された地域に農地を所有する者は,当該ダムによって堆積する土砂のため河床が上昇することを一因とする洪水被害を被るおそれがある地域に財産を所有するわけであるから,前記許可処分の取消しを求める原告適格を有するとした事例 3 電力会社が設置し水力発電の用に供していたダムについて,地方建設局長が河川法23条及び24条に基づいてした水利使用許可処分が,同処分に係る事業によって設置されたダムが一因となって洪水災害が生ずるおそれはあったものの,その被害の内容は財産的なものに限られ,かつ,これを補償する旨の約定もあること,被害発生が予想される地域については,国による各種治水対策が講じられつつあったこと,当該ダムは同処分前から長年にわたって水力発電のために利用されてきたもので,同処分はその状態を維持するために従前の許可処分とほぼ同様の内容でされたものであること,当該ダムの設置者に対しては,河川法44条1項により,河川の機能を維持するための措置等が義務付けられることもあること等の事情を総合判断して行われたものであるとして,裁量権を逸脱又は濫用した違法なものではないとされた事例

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