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御挨拶・・・
憲法週間に寄せて -国民の司法参加にさらなる期待-
岐阜地方・家庭裁判所長 安藤裕子
法を適用し透明で公正な手続により紛争解決を担う裁判所としては、社会や国民の意識に目を配りつつ、適正迅速な裁判の実施に努めることが必要です。憲法週間の機会に、司法の各分野にわたり、国民の司法参加が広くなされて、その良識が反映されている制度について触れてみたいと思います。
裁判員制度は、平成21年5月21日に始まり4年が経とうとしています。岐阜では1月末までに90件が対象となり、68件の判決がありました。この間、選挙人名簿に基づき国民から無作為に抽出された2万人以上(全国では150万人以上)が裁判員候補者名簿に登載され、そのうち約2200人(全国では約14万2000人)が実際に裁判員候補者として裁判所にお越しになり、560人余(全国では約3万7000人)の方が裁判員や補充裁判員として、その役割を果たしておられます。裁判員等経験者アンケートによると、多くの方々が審理や評議に参加できたことは有意義な体験であった、充実感を得られたとの感想を述べられ、裁判員等に選任された方々が県内各地から、仕事や家庭生活をやり繰りして参加し、熱心に審理に取組まれる姿に使命感の高さが感じられます。このように裁判員制度は、国民の幅広い理解を得て、定着しつつあります。一方、検察官、弁護人の訴訟活動も、裁判所の訴訟運営も大きく変化していることは明らかですが、さらに、よりわかりやすい、市民感覚が反映された刑事裁判の実現に向け、改善工夫を続けていかなければなりません。
民事、家事の分野で国民の司法参加が実現している制度としては、民事・家事の調停がよく知られており、司法委員、参与員の各制度もあります。調停では、裁判官と一般市民の良識を代表する調停委員2人以上からなる調停委員会が、当事者双方の言い分を聴き、主張を整理し、助言や解決案の提示を行うなど、条理に適い実情に即した柔軟な解決を目指します。市民の身近な紛争から建築・医療といった専門事件まで広く民事一般を対象とする民事調停、夫婦・親子・親族間の紛争を対象とする家事調停がありますが、いずれにおいても、調停委員は、当事者の気持ちに寄り添いながら、健全な市民感覚、良識を駆使して妥当な紛争解決に貢献しています。また、司法委員は、簡易裁判所の民事訴訟において、参与員は、家庭裁判所で行われている家事審判、離婚訴訟などにおいて、豊富な経験や専門知識、健全な良識を生かして、紛争の適切な解決に寄与していますが、どの委員も一般市民の中から選ばれているのです。
そのほか、検察審査会で行われている国民から選出された検察審査員によって、検察官が被疑者を起訴しなかったことの当否をチェックする制度は、機能強化が図られつつ60余年に亘りその役割を果たしていますし、成年後見制度においては、親族や弁護士等の専門職ではなく、一般市民の中から財産管理等を行う後見人(市民後見人)を選出し、被後見人のために力を発揮してもらうことなども始まっています。
このような国民の司法参加は、司法の場に皆さまの良識の風を入れて活き活きとした動きを生むと同時に、その一方で参加者自身にとっても、広く個人を取り巻く社会や制度にも関心を持つなどの変化を生んで、国民の司法に対する理解と信頼が進んでいます。
今、岐阜では「小学生から法に親しみ法的なものの考え方を身に付ける」法教育の取組が行われ、その中で「主権者として、法やルールを定める過程(ひいては、裁判員制度など公的な事柄全般)に積極的に参加することの重要性を理解する市民を育成する」とのテーマも掲げられています。法に支えられ、互いに個人としても尊重し合う社会へ向かう期待が膨らみます。今後とも、皆さまには司法参加への理解を深めていただき、より一層のご協力をお願い申し上げます。