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御挨拶
調停制度90周年を迎えて
民事・家事の調停をもっと身近に
岐阜地方・家庭裁判所長 安藤裕子
裁判所で紛争を解決する手続の一つに調停があるのをご存じでしょうか。
私たちの身の回りでは、知人にお金を貸したお金を返してもらえない、賃借人が建物明渡し時に原状回復をしない、交通事故の加害者から治療費や慰謝料が支払われない、離婚をするが子の親権者を父母のどちらにするか決まらず、養育費の額でもめている、相続人である兄弟間で遺産分割の話がまとまらないなどの民事や家事の争いが起こります。
そのようなとき、直接、当事者間で話し合って円満に決着できればよいのですが、個人間の話合いでは、ともすれば感情的になり、かえって問題を大きくすることもあります。
また訴訟(裁判)による解決は、厳格な法的手続や証拠を必要とするのではないか、どちらの言い分が正しいかにつき判決という形で白黒はっきりさせると将来平穏な人間関係を乱すのではないかなどと考えて、選択をためらうことがあります。
そこで、注目したいのは、裁判所の調停制度を利用して解決する方法です。
調停では、調停委員会(裁判官のほかに調停を担当するに相応しい資質、能力を備えた一般市民から選ばれた調停委員が二人以上加わって構成)が、当事者双方の言い分を十分聴き、双方ができるだけ納得して門田を解決できるように助言やあっせん、解決案の提示を行い、条理に適い実情に即した当事者の合意による自主的解決を目指します。
我が国の調停制度は90周年を迎えました。
大正11年10月1日「借地借家調停法」に基づく借地借家調停でスタートしましたが,当時,都市に人が集中し,土地や家の貸し借りをめぐる争いが増えたことから,簡単な手続きで当事者の話合いによって争いを解決する制度として創られたのです。
その後も、時代の社会紛争に応じた調停制度が創設され、昭和23年に現在の家事調停制度(家庭に関する争いを対象とし、家庭裁判所で取り扱う。)が、昭和26年には現在の民事調停制度(民事に関する争いを対象とし、簡易裁判所又は地方裁判所で取り扱う。)が昭和26年には現在の民事調停制度(民事に関する争いを対象とし、簡易裁判所又は地方裁判所で取り扱う。)が設けられました。更に、法改正や運用の改善により、その時々の社会的経済的要請に応じながら、様々な争いが調停によって解決できるようになり、機能の充実強化が図られてきました。
平成25年1月からは,改正された民事調停法と家事事件手続き法が施行され,一定の要件のもと電話会議システム等を利用することができるなど,
調停手続は市民の皆さんにとって更に利用しやすくなります。
調停は民事と家事のいずれも,訴訟(裁判)に比べて申立が簡単で費用も安く,手続が非公開の調停室で行われるためプライバシーが守られるとともに自分の意見を気兼ねなく述べることができますし,解決までの時間が比較的短くて済むという利点があります。
何と言っても,当事者の合意を基にすることから,自主的で満足な解決が期待でき,法的な評価や観点を基本に置きながらも,争いの実情に応じ,人間関係にも配慮して柔軟に解決できる点が魅力と言えましょう。
実際,対立していた当事者が,互いに理解し合って最終的合意ができた際に見せる晴れ晴れとした顔,安堵した姿は,落ち着きの良い解決を物語ります。その紛争の解決だけでなく,将来に向けた新しい関係が創造されることもあるのです。
このように、調停制度は、互譲の精神による紛争解決が我が国の国民性に合致することもあって、制度の開始から今日に至るまで広く一般にりようされ続け、これまで数多くの紛争が調停によって解決されてきました。
昨今は、社会経済情勢の変化、価値観の多様化、家族の有り様の変化などに伴い、紛争内容にも変化が生じていることから、裁判所としても、その変化に対応し法的観点や専門的知見に裏付けられた合理的あっせんができるよう紛争解決機能の強化に取り組んでいます。
調停制度90周年の節目に当たる今、裁判所の調停が、紛争解決を求める人々にとって「もっと身近で頼りになる手続」となり、当事者の高い解決意欲とともに「未来につながる解決を目指す」調停へとの思いを新たにしています。