京都家庭裁判所「法の日」ニュースレター

京都家庭裁判所「法の日」ニュースレター(PDF:994KB)

  • ウイズコロナの時代に
      京都家庭裁判所長 本多久美子
     国民生活に様々な影響を与えているコロナ禍は,家庭裁判所の執務にも大きな影響を及ぼしています。
     たとえば,狭い調停室で,2名の調停委員,事案によっては家庭裁判所調査官も出席して当事者からお話をうかがう調停手続は,「3密」になりがちです。また,同時刻に多数の事件が指定されているため,待合室も混み合ってしまいます。それを少しでも避けるため,1.事案によっては1つの事件に調停室を2室使い,待合室の密を緩和する,2.裁判所職員はもちろん来庁者にもマスクを着用していただく,3.調停室にビニールシートを設置するとともに,換気,消毒を行う,4.期日が長時間にわたらないよう工夫するなどの取組を行っているところです。また,少年事件では,集団型講習の人数を絞り,複数回にわけて講習を行っています。 
     新型コロナウイルスとの共生の取組は始まったばかりです。利用者のみなさまにはいろいろとご不便をおかけすることもあろうかと存じますが,安全と円滑な手続運営のバランスを取るための工夫を重ねていきたいと思いますので,ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

    京都家庭裁判所裁判官に訊く
      京都家庭裁判所裁判官 加藤紀子
    【問】
     どのような仕事を担当していますか。
    【答】
     家庭裁判所では,家族間や夫婦間の紛争をはじめとした家庭に関する事件を取り扱っていますが,私はその中の遺産分割事件と成年後見事件を担当しています。
    【問】
     遺産分割事件とはどのようなものですか。
    【答】
     遺産分割事件は,亡くなられた方の財産を相続人間でどのように分けるかを決めるものです。相続人である当事者それぞれが,被相続人や遺産として残された財産に対する思い,他の相続人に対する感情,自分なりに公平だと思う遺産分割の考えなどを持っています。また,長い親族関係において積み重なった不信感や感情的な対立がある事案もあり,親族間紛争特有の解決の困難さがあります。
     遺産分割事件では,まず,当事者の合意による解決を目指す調停手続が行われます。遺産分割の当事者は,親族関係にある相続人同士であるため,当事者間の話し合いによる自主的かつ円満な解決がふさわしいと考えられるからです。
    【問】
     調停のことを詳しく教えてください。
    【答】
     調停手続は,裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会で一つの事件を担当しますが,当事者から直接お話しを聞くのは調停委員が担当します。
     調停手続は,裁判所の手続である以上,公正・中立な立場で,法律的な観点から見た結論の方向性を示しながら進めていくことが重要だと考えていますが,調停における当事者の合意内容は,法律的な結論にしばられるものではなく,柔軟な内容とすることができますので,法律的な結論を見据えながらも,事案の実情や当事者の感情を踏まえた,その事案に相応しい解決ができるように当事者に働き掛けることを心がけています。
     当事者が,納得や譲歩を積み重ねながら相互に歩み寄り,最終的に合意に至った内容は,法律を当てはめて出した結論よりも,当事者の方にとって意味のあるものだと思います。
     調停手続で合意に至り,調停が成立する際には,裁判官が当事者の前で合意内容を読み上げて確認します。当事者の方がほっとした表情をされているのを見ると,とてもうれしく思いますし,紛争解決の助けができたことに充実感を感じます。
    【問】
     成年後見事件とはどのようなものですか。
    【答】
     成年後見制度は,高齢者や障害がある方など,判断能力が十分でない状態にある方について,その判断能力の程度に応じて,成年後見人,保佐人,補助人を選任して,ご本人を援助する制度です。家庭裁判所では,成年後見等を開始するかどうかの判断や後見人等の選任,監督などを行っています。
     高齢社会となり,一人暮らしの高齢者も増えている中,成年後見制度は,そうした方々を支える重要な手段の一つとなっています。
    【問】
     後見制度の利用促進に関する地域や関係機関との連携の取組について教えてください。
    【答】
     現在,全国で成年後見制度利用促進の取組が進められており,判断能力が低下したご本人を福祉・医療・地域の関係者と後見人等がチームで支える新しい仕組み作りの検討が進められています。
     裁判所においても,これまでの成年後見制度において利用しにくいとされた点について運用を改善したり,弁護士・司法書士・社会福祉士といった専門職や自治体の方々との協議をし,自治体が取り組んでいる新しい仕組み作りをバックアップしたりしています。
     今後ますます重要性を増すと考えられる成年後見制度が,より利用しやすいものとなるように,裁判所内部での検討,改善を進めるとともに,専門職や自治体の方々との協議,連携を進めていきたいと思います。

    少年調査官室から
     ~少年部における家庭裁判所調査官の仕事~
     家庭裁判所調査官は,心理学,社会学,社会福祉学,教育学等の行動科学の専門的な知見を活用して,家庭内の紛争解決や非行少年の立ち直りに向けた調査活動を行っています。少年事件の調査では,少年がなぜ非行を起こしたのかを分析しつつ,どうすれば立ち直ることができるのかを考えて,少年に対して教育的な働き掛けを行います。
     京都家庭裁判所では,調査時に行う教育的な働き掛けの一つとして,下鴨神社の協力を得て「糺(ただす)の森の清掃活動」を行っています。
     社会から取り残され,非行文化に染まる中で,周囲の迷惑に目が向かず,対人関係に問題を抱えていることが非行の一因になっている少年がいます。そのような少年を,民間の協力者や学生ボランティアと一緒に「糺の森の清掃活動」に参加させることがあります。同世代の学生と共に熱心に清掃に励み,それを大人から褒められる経験は,少年にとって自分も社会の一員なのだと見つめ直す機会となり,過去の非行を反省するきっかけにもつながるのです。調査官は,こうした少年の変化も見極めながら調査活動を行っています。