第36回さいたま地方裁判所委員会議事概要 第1 日時    令和2年11月30日(月)15:00〜16:15 第2 場所    さいたま地方裁判所大会議室 第3 出席者 1 委員 石川さおり,大段亨(委員長),黒金英明,雑崎徹,木太郎,谷口豊,任介辰哉,松苗弘幸,丸岡庸一郎(五十音順,敬称略) 2 オブザーバー 刑事首席書記官,事務局長,事務局次長,総務課長,総務課課長補佐,総務課庶務係長 第4 議題 「新型コロナウイルス感染拡大防止と裁判手続」 第5 議事 1 開会 2 委員交代の紹介及び委員の自己紹介 3 委員長の選出 4 議題についての説明及び質疑応答並びに意見交換 (1)さいたま地方裁判所における,新型コロナウイルス感染拡大防止への対応及び裁判手続の状況について,谷口委員及び任介委員から説明が行われた。 (2)質疑応答 (委員)緊急事態宣言解除後,現在の裁判所の職員の勤務態勢はどうなっているか。書記官などは,在宅でできる業務だけではないと思うが,勤務に当たって何か工夫している点はあるか。 (委員)民事部に関して言えば,今は出勤制限や在宅勤務はほとんど設けていない。必要に応じて休暇をとるなどして対応している。 (委員)裁判所の手続では,当初は3密を避けるために窓のある部屋に限定して使用していたが,それでは全く部屋が足りないので,その後は窓のない部屋も使用するようになったものもあると認識している。そのようにしないと事件数に対応できないくらい施設が不足しているので,このような緊急事態を見越して,きちんと予算をとって,裁判所の施設を充実させないといけないのではないか。例えば調停事件では代理人をつけない当事者も多く,電話会議などでは対応できない部分も多くあると思われるが,そういった場合の対応はどのようにしているか。 (委員)似たような状況にあるものとして,労働審判事件がある。労働審判は比較的大人数が一度に集まる手続であり,かつ,ウェブ会議も推奨されているものの必ずしもウェブ会議だけでは全てに対応できないという特性があって,調停事件と似ていると言えるが,部屋不足については,可能な限り部署間で融通し合い,密にならないように努力しているところである。 (委員)刑事部においても,民事部と同様に,職員に対し出勤回数の制限等の決まりは設けていない。ただし,感染が拡大していると言われる状況もあることから,事務の方法を改善した上で,在宅勤務も可と伝えているが,現実問題として難しい状況ではある。 (委員長)部屋の不足は難しい問題であり,地裁だけでは解決できないところもあるが,御意見として承る。狭い部屋で行わなければならない場合は,ビニールカーテン等を活用することで何とか運営をしているのが現状である。 (委員)説明の中でウェブ会議に関する話があったが,今後は,会議などはリアルではなくウェブで行うというのが広がっていくだろうと思う。さいたま商工会議所においてもオンライン会議を進めているが,相手によって使用するシステムが様々であり,セキュリティ対策が大切であると感じているが,裁判所では,オンラインで手続を行うに当たってセキュリティ対策はどのようにしているか。 (委員)現時点で,裁判所の民事手続でのウェブ会議で使用するのはマイクロソフト社の「チームズ」というソフトに限定されている。双方向でのやり取りではあるが,非常にクローズな状況で行われるもので,個々の弁護士にアカウントを割り当てて,そこだけと通信を行う仕組みになっている。また,外部への配信を許可しない等のルールを設けている。  (3)意見交換 (委員)緊急事態宣言が発令された中で,裁判所としても運営について模索されたことがうかがえ,裁判手続の一律停止についてもある程度はやむを得ないところであったと思う。対応については苦労された部分も多いのではないかと思うが,緊急事態宣言中,通常事件についても一律停止としたことに対しては,批判的な弁護士もいる。4月8日付けでウェブサイトに掲載されたお知らせに書かれたさいたま地裁における対応は,最高裁判所の「新型インフルエンザ等対応業務継続計画」で定められた一般継続業務もしくはそれ以外の業務のうち第一分類に当たる業務を継続業務としたものと思うが,この最高裁の業務継続計画で定められた継続すべき業務の分類についても,今回の経験を機に見直していかないといけないのではないか。例えば債権執行事件などは書類審査で対応可能だったのではないかと思うし,通常事件の判決言渡期日についても,延期する必要があったのか検証が必要だと思う。我々の依頼者の中には裁判手続がストップすることに納得できない思いを持つ方もいたところであり,そういった意見に対応している現場の声にも耳を傾けていただきたいと思う。     また,緊急事態宣言解除後の期日の再指定についても,早期に期日が再指定されたものから,2か月程度指定されなかったものもあった。担当部や担当者によっていろいろなやり方をされていたと思うが,どういったやり方が良かったのか,検証をしていただきたい。また,今後の非常事態に備えて,裁判所は,関係機関との意見交換を継続していただきたい。 (委員)緊急事態宣言中における手続の一律停止について,批判があったことは承知している。また,期日の再指定について,事件ごとにばらつきがあったことも認識している。これについては,停止した事件数がかなりの数に上ったため,やむを得ない部分もあったと御理解をいただきたい。今後の取組については検討していく。 (委員)現在の裁判手続の再開状況はどの程度か。 (委員)従前から継続していた事件については,全件審理を再開している。新しく提起された事件の第1回期日の指定については,若干の遅れが出ている状況である。理由としては,3密回避の要請から,従前に比べて場所的なキャパシティが減っていることが原因である。 (委員)裁判所の手続には様々なものがあると思うが,国民として一番気になるのは,公開の場で行われるべきものが,例えば傍聴席の数を減らして行われるとなると,国民の目に触れる可能性が低くなることが考えられる。例えば裁判をネット上で公開するといったことは今後行われると考えるか。 (委員)法制審議会で民事訴訟法改正の議論をしている中では,そこまでの意見は出ていないと承知している。とは言え,法廷においてもウェブ会議を利用するといった状況は生まれる可能性はある。今後議論されていくであろうと思う。 (委員)法廷でウェブ会議が利用できれば,遠方の証人等が裁判に参加することも可能になってくると思う。 (委員)現実問題として今すぐに裁判手続をネットで公開することは難しいかもしれないが,大きな事件などでは,関係者の傍聴の機会を確保するために,法廷と法廷を中継したり,裁判所の別室で傍聴できるようにするなど新たなやり方を考えていってもいいのではないか。 (委員)比較的新しい制度である裁判員裁判の評議室でさえ密の状態になっている現実がある。私の担当した事件でいうと,施設が確保できないために次回期日が先になるということがあった。通常であれば1か月後に次回期日が指定されるのに,2か月先でないと次回期日が入らないという事態が多発した。こういうことが続くと国民の信頼を失うことになる。有事にも裁判手続が運営されていくように,予算を取って施設・設備を整えていくような努力を継続していかなければいけないと思う。 5 閉会 第6 次回のテーマについて    委員から意見を募集した上で決定することとなった。 第7 次回期日    未定(令和3年5月頃)