p1 第31回さいたま地方裁判所委員会【議事概要】 第1 日時    平成29年5月18日(木)15:00〜17:00 第2 場所    さいたま地方裁判所大会議室 第3 出席者   【委員】   淺野友彦,荒木直人,小嶋一晃,小林久起,重川純子,設楽あづさ,関根 正昌,山光明,内藤晋太郎,中山福二,布川賢二,堀光美知子,丸岡庸一 郎,山田俊雄〔委員長〕(五十音順,敬称略)   【オブザーバー】    (民事部)工藤正,遠藤貴子,笹井朋昭,柳下俊一    (刑事部)富澤誠    (事務局)中田康夫,森本益,清水敦子,田村光希雄,道田進 第4 議題 「DV事件について」 第5 議事  1 開会 2 委員交代の紹介及び各委員の自己紹介(淺野委員,小林委員,丸岡委員,山 田委員)  委員長代理から,前回委員会から本委員会までの間の野委員,田中委員, 長谷委員,深山委員の退任及び淺野委員,小林委員,丸岡委員,山田委員の任 命について紹介があった。  淺野委員,小林委員,丸岡委員,山田委員から自己紹介があった。  深山前委員長の退任に伴い,委員長の互選が行われ,山田委員が委員長に選 任された。  3 議題「DV事件について」 (1) さいたま地方裁判所民事部職員によるDV事件の実演   裁判所職員によるDV事件(模擬)の実演が行われた。   (2) 質疑応答 p2 (委 員 長)今見ていただいたDV事件に関する実演について,御意見,御 感想をお伺いしたい。 (委 員)実演では,相手方が審尋期日にきちんと出頭してきていた。しか し,実際の場面では相手方が出頭してこないときもあると思うが, そのような場合には,手続はどうなるのか。 (委 員)裁判所から呼出しを受けると,裁判所に出頭することが多いが, 中には出頭してこない人もいる。  出頭しない場合には,もう一度呼出しの書面を相手方に送付し, 出頭を促している。今回の実演のように相手方が出頭している場合 には,審尋期日の中でDV事件の裁判結果を本人に直接告知するこ とができるので,告知したときから決定の効力が生じる。出頭しな い場合にはやむを得ず書面で結果を告知することになる場合もあ る。 (委 員)決定の書面が相手方にずっと届かない場合には,決定の効力は生 じないということになるのか。 (委 員)決定の書面が相手方に届かない場合には,決定の効力は生じない。 相手方が決定の内容に従わないときには,刑事罰が科される場合が ある。 (委 員)実演では,窓口で対応する書記官役を男性が演じていたが,対応 する職員について,来庁者の方で,男性か女性かを選ぶことはでき るか。申立てを考えているのが女性だった場合,対応する職員も女 性にして欲しいという希望もあると思うが,そのような場合,どの ように対応しているか。 (委 員)昨年までは,DV事件の担当職員が男性のみであったので男性職 員が対応していた。現在のDV事件の担当者は,男性職員と女性職 員のいずれもが配置されていることから,来庁者の要望に応じた対 応をすることが可能である。 (委 員)実演の中では,午後1時に申立書が提出され,同じ日の午後3時 から裁判官による申立人の審尋期日が開かれていた。実際の事件に おいても,同様の短いスケジュールで手続が進められているのか。 p3 (委 員)本人申立てで,本人が申立書を書いているような場合には,同様 のスケジュールで手続が進められている。 (委 員 長)裁判所におけるDV事件の手続では,配偶者暴力防止法に基づ いて保護命令を相手方に発令している。このほか,DV被害者への 対応としては,被害者から相談を受けた配偶者暴力支援センターが 警察や福祉事務所などと連携し,被害者を保護するといったシステ ムが作られている。  埼玉県への相談については,どのようになっているか。 (委 員)平成27年度の埼玉県内の配偶者暴力相談支援センターへの相談 件数は5735件である。  埼玉県には配偶者暴力相談支援センターが2か所ある。そのほか, 現在,16の市にも配偶者暴力相談支援センターがある。  市町村の相談窓口が充実してきていることから,県全体の相談件 数は右肩上がりで増えているが,県自体への相談件数は横ばいとな っている。ちなみに市町村も含めた県全体の相談件数は,10年前 の約2倍であり,配偶者暴力相談支援センター以外の市町村窓口へ の相談件数も合わせると,1万1916件である。  平成26年度に埼玉県内において一時保護された女性の人数は, 全国の要保護女子5808人のうち134人であり,同伴家族は, 5274人のうち164人となっている。DV以外の事情で保護さ れている人もいるが,DVによる被害者が約9割を占めている。  一時保護された女性の人数は,平成21年度をピークに減少傾向 にある。これは,相談窓口が増えて自力で又は身寄りを頼って避難 している者が多くなってきており,一時保護所を経由しない者も多 いと考えられる。DV相談の内容については,DVがあるので相手 方と離れたいという相談が3割,DVはあるがこのまま一緒に暮ら したいという相談が2割程度ある。さらに,避難した後に生じた問 題や支援措置に関する相談も2割程度ある。 (委 員 長)配偶者暴力に関する保護命令事件の処理状況について,全国で 新受件数総数は,おおむね3000件前後で落ち着いている。配偶 p4 者暴力相談支援センターへの相談件数は2倍に増えているが,裁判 所の申立件数は横ばいとなっている。警察への相談については,ど のようになっているか。 (委 員)警察に対する配偶者暴力の相談に対しては,加害者の暴力を止め る必要があるため,事件検挙等の措置を行っている。  配偶者暴力についての警察への相談は,恋愛のもつれが最終的に 殺人にまで発展することもあるし,DVやストーカーが社会的な問 題にもなっている。殺人事件に発展させないために,警察としては, 加害者と被害者を引き離すことにより,被害者の安全を確保してい る。  平成28年の相談受理件数は5238件と統計数値を取り始めて から初めて5000件を超えた。毎年右肩上がりに増えている。性 別は,女性が8割,男性が2割となっている。  相談に対する措置は,事件検挙が455件,援助が956件,加 害者への指導注意が3220件,防犯指導が4487件,保護命令 制度の教示が993件,婦人保護施設等への連絡が466件となっ ている。  保護命令件数は年々減少傾向にあり,昨年は55件となっている。  保護命令発令後の被害者については,定期的にパトロールを行っ ている。加害者については,保護命令後の状況を確認し,命令に違 反すると罰則を受けることがあることを注意している。  平成28年の検挙件数は455件であったが,保護命令違反の検 挙件数は0件である。  アンケートによると,事件として検挙すると自分の夫を犯罪者に することとなる,子供の父親を犯罪者にはしたくない,夫が警察に 逮捕されると生活していけないなどの回答もあったが,加害者と被 害者を引き離さなければ,その後,また暴力等を繰り返すという傾 向がある。  警察は,24時間体制をとっており,いつでも相談することがで きる。DVによる暴力はお酒を飲んで行われていることも多い。 p5 (委 員)保護命令の件数が,平成24年の117件から平成28年には5 5件と半減している。裁判所が判断した結果,相手方が悪いともい えないという結論が増えたということか。 (委 員)相手方が悪くないという判断が多くなったわけではなく,裁判所 に申立に来る件数自体が減っているため,保護命令の件数も減って いるということである。理由としては,配偶者暴力支援センターや 法テラスなどへの相談が充実しており,裁判所へ申立相談に来る前 に解決していることも多いと思われる。 (委 員 長)全国的に見ると保護命令の認容件数は,年2500件程度と横 ばいの数字となっている。 (委 員)さいたま地裁における保護命令の認容件数は,一昨年に比べ昨年 は半減した。これは認容が減って却下が増えたというわけではなく, 申立自体が減ったためである。 (委 員 長)全国的に見ると配偶者による殺人,傷害,暴行事件の検挙件数 について,殺人は横ばい傾向,傷害と暴行は増加傾向にあるが,母 数が増加しているという理解でよいか。 (委 員)傷害と暴行は検挙件数も多いが母数も増加しており,被害者の保 護を中心に取り組んでいる。埼玉県内の相談のシステムがしっかり しているのでそれが数値にも表れている。 (委 員 長)DV事件は,弁護士へ相談に行く場面も多いと思われるが,法 テラスへの相談については,どのようになっているか。 (委 員)埼玉県内の法テラスは,埼玉,川越,秩父の3か所である。居住 地に近いところで相談を受けることができる。  かつては,法テラスの一般相談でDV相談も受けていたが,DV は犯罪であることからDV相談が作られた。犯罪被害者の生活の支 えというのが重要であることから,当事者のニーズに合わせた支援 を行っている。法テラスと弁護士会の相談の違いは何かということ を聞かれるが,どちらも無料でかつ,専門性の高いメンバーを備え ている。実際には同じ弁護士が担当することも多い。  なお,法テラスは知名度があるためか,法テラスの法律相談は順 p6 番待ちが出るほど人気がある一方,弁護士会の相談は比較的空いて いる傾向にある。  どこに相談したらよいかという場合には,とりあえず法テラスの サポートダイヤルに電話してもらえば,相談の概要を聞いた上で, 弁護士会が適任であれば弁護士会を,法テラスが適任であれば法テ ラスといったふうに振り分けている。  本日の実演の申立人のように,相談に来た人が上手に説明できる ときには裁判所の手続相談でもよいが,実際には精神的にかなり参 っていて自分の状況についてうまく説明できない人も多い。そうし た人達にとっては,裁判所の窓口でサポートダイヤルを教示してい ただければ,専門家につながりやすいのではないか。 (委 員)実演では相談者が裁判所の職員に積極的に質問をして,裁判所の 職員はその質問に沿って,弁護士への相談の話などをしていたが, 実際に裁判所の職員が弁護士会のパンフレットを渡したりはする のか。  相談する人にとっては,弁護士への相談というのは費用がかなり かかるイメージがあるので,裁判所の手続相談の段階からそのよう な説明を積極的に行うのがよいと思われる。 (委 員)裁判所では,事案にもよるが,DV事件としての申立内容がはっ きりしているときには事件として受理するが,まだ何をどうしたら よいか分からないような場合や,離婚や子供の養育費等の総合的 な支援が必要な場合には,法テラス等のパンフレットを渡して考え てもらったり,警察への相談を促すなど,来庁者に応じた対応を行 っている。 (委 員)全国的に見ると,裁判官が却下した事案が5パーセント程度ある ようであるが,どのような事案が却下されるのか。 (委 員)例えば,家庭内の暴力が相当昔に行われたものであったり,すで に夫婦が別居している状況であったり,相手方に弁護士がついてい て,暴力の可能性が低い場合などがある。 (委 員)そのような場合,申立人が取り下げることはないのか。 p7 (委 員)申立人の中には,あくまで裁判所に判断をしてほしいという者も いるので,そのようなときには却下となることがある。 (委 員)申立書の様式について,相談機関の欄に市の配偶者暴力相談支援 センターに相談したというチェック項目がないので,それを加える など申立書の様式を変更することを検討することは可能か。 (委 員)検討してみたい。 (委 員)報道に携わる立場としては,数値には出てこない埋もれている部 分があるのではないかが気になるものである。数字に表れないDV 事件の現状について知りたい。 (委 員)DV事件の相手方側の代理人となったことがあった。相手方の暴 力の程度がそれほど大きくない,相手方の体調が悪く,今後の暴力 の可能性が低い等の事情があっても,保護命令が発令されていると, 慰謝料請求の場面等で不利に働く傾向があるように思われる。 (委 員)DV事件を担当する職員に対して,どのような研修が行われてい るか。 (委 員)DV事件を担当する職員に対して,DV被害者への配慮や情報漏 えいを防ぐことが重要であることなどを中心に,年2回研修を行っ ている。また,4月には,着任したさいたま管内のDV事件を担当 する主任書記官や裁判官を集めて打合せ会を行っている。  今後は,相談支援機関や法テラスなど外部機関の協力を得ること も検討してみたい。 第6 次回のテーマについて    次回のテーマについて意見交換を行った結果,「安全で利用しやすい裁判所」 をテーマとして取り上げることとした。    第7 次回期日    平成30年2月5日(月)午後3時