トップ > 各地の裁判所 > 東京地方裁判所/東京簡裁以外の都内簡易裁判所 > 裁判手続きを利用する方へ > 民事第20部(倒産部) > 第4 会社更生事件について
- 会社更生手続とはどのような手続ですか
-
窮境にある株式会社について,更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により,債権者,株主その他の利害関係人の利害を適切に調整しながら,当該株式会社の事業の維持更生を図る手続です(会社更生法1条)。
一般的に,会社更生手続は,①申立て,②保全措置,③開始決定,④債権の届出・調査・確定,⑤財産評定,⑥更生計画案の提出・決議・認可,⑦更生計画の遂行,⑧更生手続の終結という流れで進行します。
- 保全措置とはどのような手続ですか
-
会社更生法は,更生手続開始の申立てがあった時からその決定があるまでの間,開始前会社の業務を維持するとともに,その財産の隠匿や散逸を防止し,将来,更生手続が開始されたときにその後の更生手続を円滑ならしめるために,更生手続開始の申立てに伴う保全措置について定めています。
この保全措置の主なものには,①開始前会社の業務及び財産に関し,保全管理人による管理を命ずる保全管理命令(会社更生法30条),②調査委員に対し,更生手続開始決定の判断の前提となる事項等について調査を命ずる調査命令(会社更生法39条,125条1項・2項),③開始前会社に対し,債務の弁済等を禁ずる弁済禁止等の保全処分(会社更生法28条),④係属中の他の倒産手続や強制執行手続等の中止を命ずる中止命令(会社更生法24条),⑤全ての更生債権者等に対し,強制執行手続等の禁止を命ずる包括的禁止命令(会社更生法25条)などがあります。
- 更生手続が開始されるとどのような効果がありますか
-
更生手続が開始されると,更生会社の事業の経営権及び財産の管理処分権は管財人に専属し(会社更生法72条1項),更生会社に対する債権や担保権については,更生手続開始後は,原則として,更生債権や更生担保権として,更生計画の定めるところによらなければ,弁済をし,弁済を受け,その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができなくなります(会社更生法47条1項)。
また,他の倒産手続,保全・執行手続,国税滞納処分等は禁止され,既に係属しているこれらの手続は中止又は失効します(会社更生法50条1項)。
- 「更生債権」,「更生担保権」とは,どのようなものですか
-
「更生債権」とは,更生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権又は会社更生法2条8項各号に掲げる権利で,更生担保権又は共益債権に該当しないものをいいます(会社更生法2条8項)。
一方,「更生担保権」とは,更生手続開始当時,更生会社の財産につき存する特別の先取特権,質権,抵当権,商法又は会社法の規定による留置権の被担保債権であって,更生手続開始前の原因に基づいて生じたもの又は会社更生法2条8項各号に掲げるもの(共益債権であるものを除く。)のうち,当該担保権の目的である財産の価額が更生手続開始時における時価であるとした場合における当該担保権によって担保された範囲のものをいいます(会社更生法2条10項)。
また,更生債権と更生担保権を総称して,「更生債権等」といいます(会社更生法2条12項)。
- 更生会社に対して更生債権や更生担保権がある場合,どうすればいいですか
-
更生債権者や更生担保権者が更生手続に参加するためには,原則として裁判所が定める債権届出期間内に更生債権等の届出をする必要があります(会社更生法138条1項・2項)。
債権届出期間等については,会社更生手続が開始されると,官報に掲載して公告がされるほか(会社更生法43条1項),知れている更生債権者や更生担保権者に対しては,更生債権等の届出をすべき期間や更生債権等の調査をするための期間等を記載した通知書,更生債権(更生担保権)届出書,及び注意書などの書面を管財人経由で送付させていただきますので,内容をご覧になって,債権届出期間内に,更生債権(更生担保権)届出書及び法人の場合には代表者の資格証明書(登記事項証明書等)など必要書類一式を裁判所宛てに提出いただくことになります。
- 更生手続が開始されると従業員の給料や退職金はどうなりますか
-
更生手続が開始される前の未払給料については,更生手続開始前6か月間の使用人の給料請求権は共益債権といって,更生計画によらずに随時支払われます(会社更生法130条1項,132条1項・2項)。更生手続開始後の給料請求権も同様です(会社更生法127条2号)。
一方,更生手続開始前6か月を超える部分の使用人の給料請求権は,優先的更生債権となるので,更生債権の届出が必要になります(会社更生法168条1項2号,民法306条2号,民法308条,会社更生法138条1項)。
退職手当請求権については,退職の時期が,①保全期間中,②更生手続開始後から更生計画認可前及び③更生計画認可後によって会社更生法における扱いが異なりますので,更生債権届出の有無を含めて,更生管財人に問い合わせていただくことになります。