知的財産権訴訟における和解条項例集

《目次》

第1 基本文例

  1. その1
     権利侵害が認められるとの裁判所の心証開示に基づき,被告が製品の製造販売等をしない旨などを約するとともに,和解金の支払に応じるなどした場合の条項例
  2. その2
     権利侵害が認められない又は特許が無効であるとの裁判所の心証開示に基づき,原告が権利行使しない旨を約する一方,被告が無効審判請求等を取り下げる旨などを約するとともに,解決金の支払に応じるなどした場合の条項例

第2 条項別文例

《本文》

第1 基本文例

  1. 被告は,今後,別紙被告物件目録記載の物件(以下「被告製品」という。)を製造,販売しない。
  2. 被告は,原告に対し,被告製品が全て廃棄されて存在しないことを確認する。
  3. 原告は,被告に対し,被告製品につき,被告の特約店及びその顧客に対して原告の別紙原告特許権目録記載の特許権に基づく権利行使をしないことを約する。
  4. 被告は,原告に対し,和解金として○○○○万円の支払義務のあることを認め,これを令和○○年11月30日限り,原告訴訟代理人弁護士○○○○の口座(○○銀行○○支店 普通 口座番号○○○○○)に振り込んで支払う。振込手数料は被告の負担とする。
  5. 被告が前項の支払を怠ったときは,被告は,原告に対し,既払額を控除した残額及びこれに対する令和○○年12月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を直ちに支払う。
  6. 被告は,原告特許権についてした無効審判請求(無効○○○○-○○○○○○号)を取り下げ,原告は,これを承諾する。その後,被告は,知的財産高等裁判所令和○○年(行ケ)第○○○○号審決取消請求事件を取り下げ,原告は,これに同意する。[注・特許法155条2項,民事訴訟法261条2項参照]
  7. 被告は,今後,原告特許権につき,自ら又は第三者を用いて無効審判請求をしない。
  8. 原告は,その余の請求をいずれも放棄する。
  9. 原告及び被告は,原告と被告との間には,本件に関し,本和解条項に定めるもののほか,何らの債権債務のないことを相互に確認する。
  10. 訴訟費用は,各自の負担とする。
  1. 原告は,被告及び被告の取引先に対し,別紙原告特許目録記載の特許権(以下「原告特許権」という。)に基づき,別紙被告物件目録記載の物件(以下「被告製品」という。)に対し権利行使をしない。
  2. 被告は,原告特許権についてした無効審判請求(無効○○○○-○○○○○○号)を取り下げ,原告は,これを承諾する。その後,原告は,知的財産高等裁判所令和○○年(行ケ)第○○○○○号審決取消請求事件を取り下げ,被告は,これに同意する。
  3. 被告は,今後,原告が原告特許権に基づき被告又は被告の取引先に対し侵害訴訟の提起又は仮処分の申立てをした場合を除き,原告特許権の有効性を争わないことを約束する。
  4. 被告は,原告に対し,解決金として○○万円の支払義務のあることを認め,これを令和○○年○○月○○日限り,原告訴訟代理人弁護士○○○○の口座(○○銀行○○支店 普通 口座番号○○○○○)に振り込んで支払う。振込手数料は被告の負担とする。
  5. 原告は,その余の請求をいずれも放棄する。
  6. 原告及び被告は,原告と被告との間には,本件に関し,本和解条項に定めるもののほか,何らの債権債務のないことを相互に確認する。
  7. 訴訟費用は,各自の負担とする。

第2 条項別文例

(特許)

被告は,原告に対し,被告製品の製造,販売行為によって,原告特許権を侵害したことを認める。

原告は,被告に対し,被告製品が,原告特許の請求項○に係る発明の技術的範囲に属さないことを確認する。

(実用新案)

被告は,原告に対し,被告製品が,原告実用新案権の考案の技術的範囲に属することを認める。

(意匠)

被告は,原告に対し,被告製品の意匠が,原告意匠権の登録意匠の範囲に属することを認める。

(商標)

被告は,原告に対し,被告が被告標章を本体及び包装箱に付した被告商品を令和○○年○○月○○日まで取引先に販売したことが,原告商標権を侵害するものであったことを認める。

(著作権)

被告は,原告に対し,被告書籍を出版したことが,原告書籍に係る原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものであったことを認める。

(在庫)

被告は,原告に対し,被告が本日現在,被告標章を付した被告商品の在庫を有していないことを確認する。

(回収)

被告は,原告に対し,本日現在,被告商品が全て被告の下に回収済みであることを確認する。

(廃棄)

被告は,原告に対し,被告書籍の在庫を全て廃棄したことを確認する。

(抹消)

被告は,原告に対し,被告ウェブページ(URLに「http://www.○○○.com」を有する被告のインターネットのウェブページ及び同ドメイン名下に存在する全てのウェブページ)から「○○」の表示を抹消したことを確認する。

(特許)

被告は,被告製品を製造し,販売し,譲渡し,貸し渡し,譲渡若しくは貸渡しのために展示し,又は輸入若しくは輸出しない。

被告は,被告方法により○○工事を行わない。

被告は,被告方法を用いて被告製品を製造し,又は被告方法によって製造した○○を販売しない。

(商標)

被告は,被告標章を,○○若しくはこれらの包装に付し,又は被告標章を付した○○を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し若しくは輸入しない。

(不正競争)

〈混同惹起行為・著名表示冒用行為〉

被告は,令和○○年○○月○○日以降,被告商品に被告標章を使用しない。

〈形態模倣行為〉

被告は,本日以降令和○○年○○月に至るまで〔注・原告商品の最初の販売日から起算して3年の日〕,別紙被告商品目録〔省略〕記載の形態の商品を販売しない。

〈営業秘密侵害行為〉

被告は,令和○○年○○月○○日まで,本件名簿に記載された顧客に対し,あいさつ状の送付,ダイレクトメールの送付,架電その他の方法により営業行為を行わない。ただし,顧客の側から被告に取引を求めてきた場合には,この限りではない。

〈ドメイン名に係る不正行為〉

被告は,令和○○年○○月○○日以降,「○○○.co.jp」のドメイン名を使用しない。

〈信用毀損行為〉

被告は,原告商品を製造販売している原告の行為が登録第○○○○号実用新案権を侵害している旨を告知又は流布しない。

原告及び被告は,営業活動等それぞれの事業に関する一切の活動において,今後,相互に相手方を誹謗中傷する行為又はこれに類する行為をしないことを約する。

(著作権)

被告は,被告書籍を発行,販売又は頒布しない。

被告は,別紙〔省略〕被告サイトウェブ画面写しのデザインのウェブサイトをインターネット上で公衆送信しない。

(商号)

被告は,今後,「○○」との商号を使用しない。

(物品)

被告は,その本店,被告工場及び被告倉庫に存する被告製品及びその半製品(被告製品としての構造を備えているが,いまだ製品として完成していないもの)を令和○○年○○月○○日限り廃棄する。

被告は,原告に対し,令和○○年○○月○○日限り,廃棄を依頼した○○株式会社の廃棄証明書を送付する。

(表示)

被告は,令和○○年○○月末日限り,被告店舗敷地内に設置された看板に付された被告標章を抹消する。

(電磁的情報)

被告は,被告が所有し又は管理する全てのコンピュータ及びCD-ROM,光磁気ディスクその他一切の記録媒体から,○○ファイル又はそれらの複製物を削除する。

被告は,原告に対し,被告ウェブページ(URLに「http://www.○○○.com」を有する被告のインターネットのウェブページ及び同ドメイン名下に存在する全てのインターネットウェブページ)から「○○」の表示を令和○○年○○月○○日限り抹消することを約束する。

原告は,被告に対し,原告特許権を行使しない。

原告は,被告及び被告の取引先に対し,被告製品につき,原告特許権を行使しない。

原告〔注・専用実施権者〕は,被告に対し,本件特許に基づき,自ら権利を行使せず,また,原告が実施権を有する範囲内において,特許権者○○○○及びその承継人をして権利を行使させない。

原告は,令和○○年○○月○○日まで,被告が被告標章を付した商品を販売することに異議を述べない。

原告は,被告に対し,被告が本日までに製造販売した商品については,本和解期日後も原告著作権を行使しないことを確認する。

被告は,原告特許権につき,自ら又は第三者を用いて無効審判請求をしない。

被告は,今後,原告が原告特許権に基づき被告又は被告の取引先に対し侵害訴訟の提起又は仮処分の申立てをした場合を除き,原告特許権につき,自ら又は第三者を用いて無効審判請求をしない。

(無効審判手続)

被告は,原告特許権についてした無効審判請求(無効○○○○-○○○○○○号)を取り下げ,原告は,これを承諾する。その後,被告は,知的財産高等裁判所令和○○年(行ケ)第○○○○○号審決取消請求事件を取り下げ,原告は,これに同意する。

(訴訟)

被告は,原告特許権についてした知的財産高等裁判所令和○○年(行ケ)第○○○○○号審決取消請求事件を取り下げ,原告は,これに同意する。

(告訴)

原告は,速やかに,被告○○○○につき○○警察署に対してした著作権法違反の告訴を取り消す。〔注・刑事訴訟法237条参照〕

原告は,被告に対し,原告特許権について,次のとおり通常実施権を許諾する。

【範囲】

地域
日本国内
期間
原告特許権の存続期間中
内容
全部

【対価の額及び支払方法若しくは時期の定め】

特約
被告は,原告に対し,本件特許権につき第三者から特許無効の審判請求があり,その結果特許を無効とする審決が確定した場合においても,上記実施料の返還請求,その他一切の金銭上の請求をしない。

原告は,被告に対し,原告商標権について,次のとおり通常使用権を許諾する。

【範囲】

地域
日本国内
期間
原告商標権の存続期間中(更新登録により延長された期間を含む。)
内容
全部

【対価の額及び支払方法若しくは時期の定め】

更新義務
原告は,被告に対し,原告商標権の更新登録手続(被告に対する通常使用権の変更登録手続を含む。)を履行する義務を負う。この場合,原告及び被告は,互いに,登録手続に必要な申請書類を交付する。
(一括払)

被告は,原告に対し,和解金として○○○○万円の支払義務があることを認め,これを令和2年3月31日限り,○○○○に振り込んで支払う。振込手数料は被告の負担とする。

被告が前項の支払を怠ったときは,被告は,原告に対し,既払額を控除した残額及びこれに対する令和2年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払う。

(分割払)

被告らは,原告に対し,本件和解金として,連帯して,600万円の支払義務があることを認める。

被告らは,原告に対し,連帯して,前項の金員のうち500万円を,次のとおり分割して,○○銀行○○支店の「○○○○」名義の当座預金口座(口座番号○○○○)に振り込んで支払う。

  1. 令和2年1月末日限り200万円
  2. 令和2年2月から令和4年1月まで,毎月末日限り,各10万円(24回)
  3. 令和4年2月末日限り60万円

被告らが前項(1)の支払を怠ったとき又は同項(2)の分割金の支払を2回以上怠り,その額が20万円に達したときは,当然に期限の利益を喪失し,被告らは,原告に対し,連帯して,第○項の600万円から既払金を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を直ちに支払う。

被告らが前々項(3)の支払を怠ったときは,被告らは,原告に対し,連帯して,第○項の600万円から既払金を控除した残金及びこれに対する令和4年3月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を直ちに支払う。

被告らが令和4年2月末日までに第○項の500万円を期限の利益を喪失することなく支払ったときは,原告は,被告らに対し,第○項の残金100万円の連帯支払義務を免除する。

(違約金)

被告が令和○○年○○月○○日以降,被告標章を使用したときは,被告は,原告に対し,1日当たり○万円の割合による違約金を支払う。ただし,この違約金は,原告の被告に対する損害賠償請求権の上限を画するものではない。

被告が第○項〔省略〕に違反したときは,被告は,原告に対し,被告の販売した製品1個につき,その販売価格の1.5倍の金額を違約金として支払う。

(移転登録)

被告は,原告に対し,本日,原告特許権の被告共有持分を全部譲渡し,原告はこれを譲り受ける。

被告は,原告に対し,本件特許権について前項の譲渡を原因とする持分移転登録手続をする。ただし,移転登録手続に要する費用は原告の負担とする。

(設定登録)

原告は,被告に対し,原告意匠権につき,前項〔省略〕の実施契約を原因とする専用実施権設定登録手続をする。ただし,登録手続費用は被告の負担とする。

(商号抹消等)

被告は,原告に対し,令和○○年○○月末日限り,○○法務局令和○○年○○月○○日受付をもってした被告の設立登記中,「○○○○」の商号登記について,抹消登記手続をする。

(基本形)

原告及び被告は,本和解内容を第三者に開示しない。

(正当な理由のない不開示を約束する例)

原告及び被告は,本件訴訟が和解により解決したことを除き,本和解内容を正当な理由なく第三者に開示しないことを約する。

(開示しない内容を個別に定める例)

原告及び被告は,第●項の被告による和解金支払の合意,金額及び支払の事実を秘密とし,第三者に開示しない。

(開示できる相手方を明示する例)

原告及び被告は,本和解内容を,株式会社●●及び株式会社■■を除く第三者に開示しない。

(開示できる場合を具体的に定める例)

原告及び被告は,本件訴訟が和解により解決したことを除き,本和解内容を第三者に開示しない。ただし,原告及び被告は,原告が○項に定める専用実施権の設定又は特許権の譲渡をした場合は,本件特許権の専用実施権者又は譲受人に対し,本和解内容を開示することができる。

原告は,その余の請求を放棄する。

(全面的清算)

原告及び被告は,原告と被告との間には,本和解条項に定めるもののほか,何らの債権債務がないことを相互に確認する。

(本件権利関係)

原告及び被告は,原告と被告との間には,本件に関し,本和解条項に定めるもののほか,何らの債権債務のないことを相互に確認する。

訴訟費用は各自の負担とする。

訴訟費用及び和解費用は各自の負担とする。〔注・利害関係人が参加した場合〕

(平成20年12月,平成31年1月,令和元年5月改定)

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