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最高裁判所判例集

事件番号

 平成17(受)364

事件名

 建築物撤去等請求事件

裁判年月日

 平成18年3月30日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 民集 第60巻3号948頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成15(ネ)478

原審裁判年月日

 平成16年10月27日

判示事項

 1 良好な景観の恵沢を享受する利益は法律上保護されるか
2 良好な景観の恵沢を享受する利益に対する違法な侵害に当たるといえるために必要な条件
3 直線状に延びた公道の街路樹と周囲の建物とが高さにおいて連続性を有し調和がとれた良好な景観を呈している地域において地上14階建ての建物を建築することが良好な景観の恵沢を享受する利益を違法に侵害する行為に当たるとはいえないとされた事例

裁判要旨

 1 良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益は,法律上保護に値するものと解するのが相当である。
2 ある行為が良好な景観の恵沢を享受する利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには,少なくとも,その侵害行為が,刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり,公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど,侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められる。
3 南北約1.2kmにわたり直線状に延びた「大学通り」と称される幅員の広い公道に沿って,約750mの範囲で街路樹と周囲の建物とが高さにおいて連続性を有し,調和がとれた良好な景観を呈している地域の南端にあって,建築基準法(平成14年法律第85号による改正前のもの)68条の2に基づく条例により建築物の高さが20m以下に制限されている地区内に地上14階建て(最高地点の高さ43.65m)の建物を建築する場合において,(1)上記建物は,同条例施行時には既に根切り工事をしている段階にあって,同法3条2項に規定する「現に建築の工事中の建築物」に当たり,上記条例による高さ制限の規制が及ばないこと,(2)その外観に周囲の景観の調和を乱すような点があるとは認め難いこと,(3)その他,その建築が,当時の刑罰法規や行政法規の規制に違反したり,公序良俗違反や権利の濫用に該当するなどの事情はうかがわれないことなど判示の事情の下では,上記建物の建築は,行為の態様その他の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くものではなく,上記の良好な景観に近接する地域内に居住する者が有するその景観の恵沢を享受する利益を違法に侵害する行為に当たるとはいえない。

参照法条

 (1〜3につき)民法709条,憲法13条,景観法2条1項,東京都景観条例(平成9年東京都条例第89号)1条,国立市都市景観形成条例(平成10年国立市条例第1号)1条,都市計画法(平成12年法律第73号による改正前のもの)12条の4,都市計画法(平成12年法律第73号による改正前のもの)12条の5第3項,建築基準法(平成14年法律第85号による改正前のもの)68条の2,国立市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例(平成11年国立市条例第30号。平成12年国立市条例第26号による改正前のもの)7条(3につき)建築基準法(平成14年法律第85号による改正前のもの)3条2項

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