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最高裁判所判例集

事件番号

 平成20(許)18

事件名

 文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件

裁判年月日

 平成20年11月25日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 決定

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 民集 第62巻10号2507頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成19(ラ)1724

原審裁判年月日

 平成20年4月2日

判示事項

 1 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しないとされた事例
2 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が行った顧客の財務状況等についての分析,評価等に関する情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,上記文書が民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しないとされた事例
3 事実審である抗告審が民訴法223条6項に基づき文書提出命令の申立てに係る文書をその所持者に提示させ,これを閲読した上でした文書の記載内容の認定を法律審である許可抗告審において争うことの許否

裁判要旨

 1 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,次の(1),(2)の事情の下では,上記文書は,当該金融機関の職業の秘密が記載された文書とはいえず,民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しない。
(1) 当該金融機関は,上記情報につき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有しない。
(2) 当該顧客は,上記民事訴訟の受訴裁判所から上記情報の開示を求められたときは,次のア,イなどの理由により,民訴法220条4号ハ,ニ等に基づきこれを拒絶することができない。
ア 当該顧客は,民事再生手続開始決定を受けており,それ以前の信用状態に関する上記情報が開示されても,その受ける不利益は軽微なものと考えられる。
イ 上記文書は,少なくとも金融機関に提出することを想定して作成されたものであり,専ら内部の者の利用に供する目的で作成され,外部の者に開示することが予定されていないものとはいえない。
2 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客の財務情報等を基礎として行った財務状況,事業状況についての分析,評価の過程及びその結果並びにそれを踏まえた今後の業績見通し,融資方針等に関する情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,次の(1),(2)などの判示の事情の下では,上記情報は,当該金融機関の職業の秘密には当たるが,保護に値する秘密には当たらないというべきであり,上記文書は,民訴法220条4号ハ所定の文書に該当しない。
(1) 当該顧客は,民事再生手続開始決定を受けており,それ以前の財務状況等に関する上記情報が開示されても,その受ける不利益は小さく,当該金融機関の業務に対する影響も軽微なものと考えられる。
(2) 上記文書は,上記民事訴訟の争点を立証する書証として証拠価値が高く,これに代わる中立的・客観的な証拠の存在はうかがわれない。
3 事実審である抗告審が民訴法223条6項に基づき文書提出命令の申立てに係る文書をその所持者に提示させ,これを閲読した上でした文書の記載内容の認定は,それが一件記録に照らして明らかに不合理であるといえるような特段の事情がない限り,法律審である許可抗告審において争うことができない。

参照法条

 (1,2につき)民訴法197条1項3号,民訴法220条4号ハ (3につき)民訴法223条6項,民訴法337条

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