裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成19(受)783
- 事件名
損害賠償請求事件
- 裁判年月日
平成21年3月27日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄差戻
- 判例集等巻・号・頁
集民 第230号285頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
平成17(ネ)5782
- 原審裁判年月日
平成19年1月31日
- 判示事項
全身麻酔と局所麻酔の併用による手術中に生じた麻酔による心停止が原因で患者が死亡した場合において,麻酔医に各麻酔薬の投与量を調整すべき注意義務を怠った過失があり,同過失と死亡との間に相当因果関係があるとされた事例
- 裁判要旨
全身麻酔と局所麻酔の併用による手術を受けた65歳の患者が術中に麻酔の影響により血圧が急激に低下し,引き続き生じた心停止が原因となって死亡した場合において,次の(1),(2)などの事実関係の下では,各麻酔薬の投与量をどの程度減らすかについて麻酔医の裁量にゆだねられる部分があり,いかなる程度減量すれば死亡の結果を回避することができたといえるかが確定できないとしても,その投与量を適切に調整しても患者の死亡という結果を避けられなかったというような事情がうかがわれない以上,麻酔医には患者の年齢や全身状態に即して各麻酔薬の投与量を調整すべき注意義務を怠った過失があり,この過失と患者の死亡との間に相当因果関係がある。
(1) 全身麻酔薬プロポフォールについては,局所麻酔薬と併用投与する場合及び高齢者に投与する場合には血圧低下等の副作用が現れやすいので投与速度を減ずるなど慎重に投与すべきことが,局所麻酔薬塩酸メピバカインについては,重大な副作用として心停止等があり,高齢者には投与量の減量等を考慮して慎重に投与すべきことが,各能書に記載されていた。
(2) 麻酔医は,全身麻酔により就眠を得た患者に対し,能書に記載された成人に対する通常の用量の最高限度量の塩酸メピバカインを投与し,その効果が高まるに伴って低下した患者の血圧が少量の昇圧剤では回復しない状態となっていたにもかかわらず,プロポフォールを成人において通常適切な麻酔深度が得られるとされる速度のまま持続投与した。
- 参照法条
民法709条
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