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最高裁判所判例集

事件番号

 平成20(受)1602

事件名

 損害賠償請求事件

裁判年月日

 平成21年7月9日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄自判

判例集等巻・号・頁

 集民 第231号241頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成20(ネ)280

原審裁判年月日

 平成20年6月19日

判示事項

 株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,株主が損害を被ったことにつき,会社の代表者に従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制構築義務違反の過失がないとされた事例

裁判要旨

 株式会社の従業員らが営業成績を上げる目的で架空の売上げを計上したため有価証券報告書に不実の記載がされ,その後同事実が公表されて当該会社の株価が下落し,公表前に株式を取得した株主が損害を被ったことにつき,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,当該会社の代表者に,従業員らによる架空売上げの計上を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるとはいえない。
(1) 当該会社は,営業部の所属する事業部門と財務部門を分離し,売上げについては,事業部内の営業部とは別の部署における注文書,検収書の確認等を経て財務部に報告される体制を整えるとともに,監査法人及び当該会社の財務部がそれぞれ定期的に取引先から売掛金残高確認書の返送を受ける方法で売掛金残高を確認することとするなど,通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていた。
(2) 上記架空売上げの計上に係る不正行為は,事業部の部長が部下である営業担当者数名と共謀して,取引先の偽造印を用いて注文書等を偽造し,これらを確認する担当者を欺いて財務部に架空の売上報告をさせた上,上記営業担当者らが言葉巧みに取引先の担当者を欺いて,監査法人等が取引先あてに郵送した売掛金残高確認書の用紙を未開封のまま回収し,これを偽造して監査法人等に送付するという,通常容易に想定し難い方法によるものであった。
(3) 財務部が売掛金債権の回収遅延につき上記事業部の部長らから受けていた説明は合理的なもので,監査法人も当該会社の財務諸表につき適正意見を表明していた。

参照法条

 会社法350条

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