裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和24(れ)2273
- 事件名
業務妨害
- 裁判年月日
昭和31年12月11日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第10巻12号1605頁
- 原審裁判所名
福岡高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和24年3月17日
- 判示事項
一 期待可能性の不存在を理由として刑事責任を否定する場合、法文上の根拠を示すことを要するか
二 いわゆるピケツテイングが威力業務妨害罪にあたらない一事例
- 裁判要旨
一 論旨は、原判決は被告人の所為について期待可能性がないとしてその刑事責任を否定したのであるが、その根拠としてはただ漫然条理上責任を阻却するというに止まり、何故期待可能性なき場合には刑事責任が排斥されるかを成文との繋りにおいて明示してその法的根拠を充分に説示していないから、結局裁判に理由を附せず又は判決に示すべき判断を遺脱した違法があると主張する。しかし期待可能性の不存在を理由として刑事責任を否定する理論は、刑法上の明文に基くものではなく、いわゆる超法規的責任阻却事由と解すべきものである。従つて、原判決がその法文上の根拠を示すことなく、その根拠を条理に求めたことは、その理論の当否は別としても、なんら所論のような違法があるものとはいえない。
二 炭坑労働組合が同盟罷業中一部組合員が罷業から脱退して会社の出炭運搬業務に従事し石炭を積載した炭車を連結したガソリン車の運転を開始した際、組合婦人部長たる被告人が、右一部組合員の就業は経営者側との不純な動機に出たもので罷業を妨害する裏切行為であり、これにより罷業が目的を達成し得なくなると考え、既に多数婦人組合員等がガソリン車の前方線路上に立ち塞がり、座り込みまたは横臥してその進行を阻止していたところに参加して「ここを通るなら自分たちを轢き殺して通れ」と怒号して就業組合員等のガソリン車の運転を妨害した行為は、未だ違法に刑法第二三四条にいう「威力を用い人の業務を妨害したる者」というに足りない。
(裁判官垂水克己の補足意見)本件所為は、いまだ違法に刑法第二三四条にいう威力を用いて人の業務を妨害したものということができないと考えられる。その主な理由は、右所為は同盟罷業中の組合員が同じ事業場の仲間組合員に対してしたものであり、かつ、被告人の軌道上に赴いてからの右所為は極めて短時分の間に行われたという原判決の認定と解することができ、結局軽微のものとみられるからである。
- 参照法条
刑訴法44条,刑法234条,刑法35条,労働組合法1条,裁判所法11条
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