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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)706

事件名

 労働組合法違反、労働関係調整法違反

裁判年月日

 昭和24年4月23日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第3巻5号592頁

原審裁判所名

 広島高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年5月21日

判示事項

 一 使用者が勞働組合に彈壓を加え團結權を破壊する意圖の下になした不利益取扱と使用者の責任
二 クローズド・シヨツプ規約がある場合組合から除名された労働者に對する使用者の不利益取扱と労働關係調整法第四〇條違反の有無
三 勞働者が勞働条件の維持改善等の手段として所長の追放を主張してなした勞働爭議の正否
四 労働組合法第一一條、労働關係調整法第四〇條にいわゆる不利益な取扱の意義

裁判要旨

 一 しかして判示のごとく使用者が勞働者のなした勞働争議に對する責任を問い勞働組合員に彈壓を加え組合の團結を破壊してこれを弱体化せしめようとする意圖の下に勞働者に對して不利益取扱をした場合においては、たとい右意圖の外に組合員の不當怠業行爲の責任をも併せて問う意圖があつたにせよ、單に不當怠業行爲の責任のみを問うて不利益取扱をなした場合とは異つて勞働者が勞働組合員であること若しくは勞働組合の正當な行爲をなしたこと又は勞働爭議をなしたこと等と右の労働者に對する不利益取扱との間には因果關係が存することが明かであるから右使用者の労働者に對する不利益取扱行爲は労働組合法第一一條又は労働關係調整法第四〇條に違反するものと認むべきである。
二 しかしながらクローズド・ヨシツプの規約がある場合においても組合から除名された者に對する使用者の解雇その他の不利益取扱はすべて労働關係調整法第四〇條に違反しないものと即斷することはできない。かゝる場合でも右クローズド・シヨツプ側に關する規約の具体的内容、組合と使用者との關係組合員除名の理由、右の除名が果して組合の自主性においてなされたかどうか、不利益取扱をした使用者側の意圖等を十分に審理檢討した上右不利益取扱が労働者の爭議權を不當に侵犯するものであるかどうかを基準としてその不利益取扱が同法第四〇條の違反となるかどうかを決しなければならないのである。
三 判示A炭礦株式會社C礦業所長の追放を主張して勞働爭議をなす場合においてもそれが專ら同所長の追放自體を直接の目的とするものではなく、勞働者の勞働条件の維持改善その他經濟的地位の向上を圖るための手段としてこれを主張する場合にはかかる行爲は必ずしも勞働組合運動として正當な範圍を逸脱するものということを得ないと解すべきである。
四 労働組合法第一一條又は労働關係調整法第四〇條にいわゆる不利益な取扱とはたとえば減俸昇給停止等の經濟的待遇に關して不利な差別待遇を與えるのみでなく廣く精神的待遇等について不利な差別的取扱をなすことをも含むものと解すべきである、從つて使用者が労働者に對して出勤停止處分をなした場合においては、たとえ、これによつて給與その他の經濟的待遇について、不利益な結果をきたさなくとも右法條にいわゆる不利益な取扱に當るものと解して妨げない。

参照法条

 労働組合法11條,労働調整法40條,労働關係調整法40條,労働關係調整法第40條,勞働組合法第11條

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