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事件番号
 昭和22(れ)188
事件名
 窃盗
裁判年月日
 昭和23年7月7日
法廷名
 最高裁判所大法廷
裁判種別
 判決
結果
 棄却
判例集等巻・号・頁
 刑集 第2巻8号801頁
原審裁判所名
 東京高等裁判所
原審事件番号
原審裁判年月日
 昭和22年10月16日
判示事項
 一 裁判所法施行法第二條及び同施行令第一條の合憲性と憲法第一三條、第一四條
二 被告人の自白の外相被告人の供述を補強證據とした場合と、憲法第三八條第三項
三 裁判所法施行法第二條及び同施行令第一條の合憲性と憲法第三二條
四 東京高等裁判所の五人構成の合議體と、憲法第七六條第二項
五 裁判と憲法第八一條にいわゆる「處分」
六 裁判に對する違憲審査と審級制との關係
七 裁判と刑訴應急措置法第一七條第一項にいわゆる「處分」
八 特に積極的に憲法適合の判斷を表明していない判決に對する憲法違反を理由とする再上告の適否
九 事實認定乃至採證違反を理由とする再上告と憲法第三一條
裁判要旨
 一 從來大審院が受理していた事件を東京高等裁判所において受理したものとみなした裁判所法施行令第一條及びその根據たる裁判所法第二條は、憲法第一三條、第一四條に違反するものではない。
二 本件第二審判決は本件再上告被告人Aに關する犯罪として認定した事實は、關係各被告人が當公判廷で自分の關係している部分に付て同様の趣旨を供述しているので、これを認めることができるとしている。すなわち、本件被告人Aの自白の外に前記多數の相被告人の供述を證據として採用しているのであるから、憲法第三八條第三項にいわゆる「自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合」に該當しないものと言わなければならぬ。從つて、第二審判決を是認した原審判決は結局正當であるから、論旨はこの點において理由がない。
三 裁判所の裁判權、審級その他の構成は、憲法上原則として法律において、定められることとなつており、その内容が公共の福祉に反しない限り有効であることは論をまたぬ、前記規定(裁判所法施行法第二條同施行令第一條)は前述のごとく公共の福祉に反するものではないから國民はこれらの規定の定めるところに從つて裁判所において裁判を受ける權利が保障されている。從つて前記規定は所論のごとく憲法第三二條に違反するということを得ない。
四 前記一群の事件を處理するために東京高等裁判所に五人構成の合議體を置いたが、これは純然たる司法裁判所であつて、司法裁判所の外に特別裁判所を設けたものではないから、所論のように憲法第七六條第二項の趣旨に違反するものと言うことはできない。
五 憲法第八一條によれば、最高裁判所は、一切の法律、一切の命令、一切の規則又は一切の處分について違憲審査權を有する。裁判は一般的抽象的規範を制定するものではなく。個々の事件について具體的處置をつけるものであるから、その本質は一種の處分であることは言うをまたぬところである。法律、命令、規則又は行政處分の憲法適否性が裁判の過程において終審として最高裁判所において、審判されるにかかわらず、裁判の憲法適否性が裁判の過程において終審として最高裁判所において審判されない筈はない。否、一切の抽象的規範は、法律たると命令たると規則たるとを問わず、終審として最高裁判所の違憲審査權に服する。
六 裁判の違憲審査權は、普通の上級審下級審の關係でのみ行われるものとすれば、法律が審級制を定めるに當り、例えば現行裁判所法のように、簡易裁判所を起點とする三審制と地方裁判所を起點とする三審制を二元的に設けている場合においては、前系統の三審制の過程における裁判の違憲審査は、終に最高裁判所の權限に屬しない結果となる。かかる結果は、到底容認すべからざるところであつて、この説の缺陷と誤謬を露呈することになるのである。
七 刑訴應急措置法第一七條第一項において「高等裁判所が上告審としてした判決に對しては、その判決において法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかについてした判斷が不當であることを理由とするときに限り、最高裁判所に上告することができる」と規定したのは、前記憲法第八一條の原理に從つて再上告の道を確認したに過ぎないのである。すなわち、高等裁判所が上告審としてした判決に對しては單なる審級制からすれば、最早再上告を許す必要はないのであるが、違憲審査制からすれば、憲法適否を理由とする限り最高裁判所に再上告を許す必要があるのでこれを確認して明定したまでのことである。言いかえれば、措置法の規定によつて初めて再上告が許されたものではなく、憲法適否の審査は審法第八一條によつて終審として最高裁判所の權限に屬するという原理を再確認して再上告を定めたものである。されば、前記措置法第一七條にいわゆる處分の中に裁判を含むことは憲法第八一條の場合と同樣である。
八 刑訴應急措置法第一七條の適用に關し、判決において憲法違反の判斷をする場合には、その判斷は積極的に表明せられることを要するのは性質上當然であるが、それに反し憲法適合の判斷をする場合には、その判斷は必ずしも常に積極的に表明せられることを要せず、特に判決において憲法違反を表明していないときは、すべて憲法適合の判斷を含蓄しているものと解することが相當であり、且つ憲法第八一條の精神によく合致するものと言わなければならない。從つて再上告は憲法適否を理由とする限り適法であると解すべきである。
九 本件再上告趣意第三點は憲法、適否を理由として主張しているから一應再上告の訴訟要件を具備し、適法なもののごとくである。しかし本件は、公開の公平な裁判所において、合憲的な刑事訴訟の手續に從い十分被告人の辯明を聽いて審理せられ、刑罰を科せられたものであることは、一見記録に徴し明らかである。それ故憲法第三一條違反を理由とする論旨は當らない。事實審である第二審判決の事實認定乃至證據の採否に、たとえ所論のような瑕疵(刑訴法第三三六條及び同第三六〇條第一項違反)があつたとしても、それは單に刑事訴訟法の手續違反の問題であつて、憲法違反の問題ではあり得ない。從つて、これを再上告の理由として認めることはできないのである。
参照法条
 裁判所法施行法2條,裁判所法施行令1條,憲法13條,憲法14條,憲法38條3項,憲法32條,憲法76條2項,憲法81條,憲法31條,刑訴應急措置法17條1項,刑訴應急措置法17條,刑訴法336條,刑訴法360條1項
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