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事件番号
 昭和23(れ)141
事件名
 食糧管理法違反
裁判年月日
 昭和25年2月1日
法廷名
 最高裁判所大法廷
裁判種別
 判決
結果
 棄却
判例集等巻・号・頁
 刑集 第4巻2号73頁
原審裁判所名
 東京高等裁判所
原審事件番号
原審裁判年月日
 昭和22年12月22日
判示事項
 一 ポツダム宣言の受諾による基本的人權の尊重確立と憲法第三八條
二 下級裁判所の違憲審査權と憲法第八一條
三 食糧管理法の意義
四 憲法第九八條第一項の法意と食糧管理法
裁判要旨
 一 ポツダム宣言の受諾によつて、わが國が「基本的人權の尊重は確立せらるべし」との同宣言の條項を誠實に履行すべき責務を負擔たことは、まさに所論のとおりである。しかしながら、右條項は、わが國が立法その他の國政の上において、人權尊重の原則を確立すべき旨の原理を宣言たものに過ぎないのであつてこの原理に準據して基本的人權をいかに具体的現、實的に保障していくべきかは、ポツダム宣言の受諾後におけるわが國の責務の履行として順次に遂行實現せらるべき事柄に屬するわけである。そして日本國憲法の制定に依て、ポツダム宣言の趣旨に從い、基本的人權が具体的、現實的に保障され、その尊重が確立されるに至つた。所論の自白に關する證據上の制限も、憲法第三八條によつて初めて基本的人權の一つとして保障されるに至つたものである。されは、憲法の施行前すでにポツダム宣言の受諾によつて直ちにかかる證據上の制限に關する國民の權利が確立したとの所論には、賛同することを得ない。
二 憲法は國の最高法規であつてその條規に反する法律命令等はその効力を有せず、裁判官は憲法及び法律に拘束せられ、また憲法を尊重し擁護する義務を負うことは憲法の明定するところである。從つて、裁判官が。具体的訴訟事件に法令を適用するに當り、その法令が憲法に適合するか否かを判斷することは、憲法によつて裁判官に課せられた職務と職權であつて、このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問わない。憲法第八一條は、最高裁判所が違憲審査權を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であつて下級裁判所が違憲審査權を有することを否定する趣旨をもつているものではない。それ故、原審が所論の憲法適否の判斷をしたことはもとより適法であるのみでなく、原審は憲法適否の判斷を受くるために最高裁判所に移送すべきであるとの所論は、全く獨斷と云うの外はない。
三 食糧管理法は戰時の制定にかゝること所論のとおりであるが、同法は國家總動員法のごとく戰時に際して國防目的を達成する爲に國の全力を最も有効に發揮せしむるよう人的及び物的資源を統制運用するための法規ではなく、國民食糧の確保と國民經濟の安定とを図るため、食糧を管理してその需給と價格との調停並に配給の統制を行うことを目的として制定せられたものであつて、國内における食糧絶對量の不足に當面する國民の主要食糧の獲得について、一般民衆ができるだけ平等な機會をもつことを確保せしめんとするものである。
四 憲法第九八條は憲法の條規に反する法律等の効力を有しないことを規定しているが、同條は憲法施行の前後にかゝわらず制定せられた法律等の有効であるか否かを決定する基準を示す規定であると解すべきであるから、前記のような性格を有する食糧管理法は、特に經過規定を必要とせず、新憲法の施行後においてもその効力を持續すること、同條の規定によつて明らかであると云わねばならない。(昭和二三年(れ)第二〇五號同年九月二九日大法廷判決參照)。
参照法条
 憲法38條,憲法11條,憲法76條3項,憲法81條,憲法98條1項,ポツダム宣言10號,食糧管理法1條
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