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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)652

事件名

 公文書偽造、教唆、偽造公文書行使幇助、収賄

裁判年月日

 昭和23年10月23日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第2巻11号1386頁

原審裁判所名

 広島高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年4月23日

判示事項

 一 採證と證據調の限度
二 刑務所醫務課長名儀の診斷書と公文書
三 公文書無形僞造の教唆を共謀した者の一人が結局公文書有形僞造の教唆により目的を達した場合の他の者の責任
四 公文書が僞造のものであることを知らず唯その内容が虚僞のものであると考えて行使した者の責任
五 刑務所看守部長が在監者の接見等について便宜な處置を採つたことの謝禮として金員を受領した行爲と收賄罪の成否
六 職務の内外に亘る行爲につき不可分的になされた謝禮と賄賂性の範圍

裁判要旨

 一 證據調は事件について證據となり得るすべての資料について爲さねばならぬものではなく、裁判所が事實認定の爲め必要と認めるものについて爲せば足るものである。
二 原判決の舉示する證據によつて第一審相被告人Aが第一審相被告人Bを教唆し同人をして原判示の如き岡山刑務所醫務課長C名儀の診斷書一通を僞造せしめた事實を認定することができるのであるから原審が右診斷書を公文書と認定したのは正當である。
三 刑法第一五條六の公文書無形僞造の罪を教唆することを共謀した者の一人が結局公文書有形僞造教唆の手段を選びこれによつて目的を達した場合には、共謀者の他方は事實上公文書有形僞造教唆に直接關與しなかつたとしても、その結果に對する故意の責任を負わなければならない。
四 公文書が僞造のものであることを知らなかつたとしても、虚僞内容のものであると考えて行使した場合には僞造公文書行使罪の故意犯が成立する。
五 被告人(刑務所看守部長)がDの接見等について寛大便宜の處置を採つたことに對する謝禮の趣旨において金員を受取ることは被告人の職務に關するものであることは容疑の餘地のないところである。
六 職務行爲に對する謝禮と職務外の行爲に對する謝禮と不可分的に包括して提供された金員を公務員がその事實を知りながら之を收受した場合にはその金員全部は包括して不可分的に賄賂性を帶ぶるものである

参照法条

 刑訴法336條,刑法155條1項,刑法156條,刑法155條,刑法61條,刑法38條,刑法158條,刑法197條

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