裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和23(れ)829
- 事件名
食糧管理法違反
- 裁判年月日
昭和24年7月13日
- 法廷名
最高裁判所大法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第3巻8号1286頁
- 原審裁判所名
名古屋高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和23年2月13日
- 判示事項
憲法第二九條第三項にいわゆる「正當な保障」の意義と政府が供出米の買入代金を供出と同時に支拂わない事實の違憲性の有無
- 裁判要旨
憲法第二九條は、財産權の不可侵を規定すると共に「私有財産權は正當な補償の下に、これを公共のために用いることができる」と定めている。從つて國家が私人の財産を公共の用に供するにはこれによつて私人の破るべき損害を填補するに足りるだけの相當な賠償をしなければならないことは云うまでもない。しかしながら、憲法は「正當な補償」と規定しているだけであつて、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供與と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと云わなければならない。もつとも、補償が財産の供與より甚しく遅れた場合には、遅延による損害を填補する問題を生ずるであろうか、だからといつて憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。食糧管理法によるいわゆる供出については、政府から買入代金の支拂として正當な補償がなされることは公知の事實であり、再上告人もまた、その受領を認めている。ただ本件の買入代金の支拂は供出後に行われたに過ぎないのである。それが憲法違反でないことは前記の説明によつて明らかであろう。されば政府が食糧管理法に基き個人の産米を買上げるには供出と同時に代金を支拂わなければ憲法第二九條に違反するとの論旨は理由がない。
- 参照法条
憲法29条,食糧管理法2条