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事件番号
 平成22(行ヒ)102
事件名
 神戸市外郭団体派遣職員への人件費違法支出損害賠償等請求事件
裁判年月日
 平成24年4月20日
法廷名
 最高裁判所第二小法廷
裁判種別
 判決
結果
 破棄自判
判例集等巻・号・頁
 民集 第66巻6号2583頁
原審裁判所名
 大阪高等裁判所
原審事件番号
 平成20(行コ)88
原審裁判年月日
 平成21年11月27日
判示事項
 1 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,市長に過失があるとはいえないとされた事例
2 普通地方公共団体が条例により債権の放棄をする場合におけるその長による放棄の意思表示の要否
3 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の不当利得返還請求権を放棄する旨の議会の議決の適法性及び当該放棄の有効性に関する判断基準
4 住民訴訟の係属中にされたその請求に係る市の不当利得返還請求権を放棄する旨の条例の制定に係る市議会の議決が適法であり,当該放棄が有効であるとされた事例
裁判要旨
 1 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことにつき,次の(1)〜(4)など判示の事情の下では,市長に過失があるとはいえない。
(1) 同法は,地方公共団体が上記団体に支出した補助金等が上記職員の給与に充てられることを禁止する旨の明文の規定は置いていない。
(2) 同法の制定の際の国会審議において,地方公共団体が営利法人に支出した補助金が当該法人に派遣された職員の給与に充てられることの許否は公益上の必要性等に係る当該地方公共団体の判断による旨の自治政務次官の答弁がされていた。
(3) 同法の制定後,総務省の担当者も,上記団体における上記職員の給与に充てる補助金の支出の適否は同法の適用関係とは別途に判断される旨を上記市や他の地方公共団体の職員に対して説明していた。
(4) 法人等に派遣された職員の給与に充てる補助金の支出の適法性に関し,同法の施行前に支出された事例については裁判例の判断が分かれており,同法の施行後に支出がされた事例については同法と上記支出の関係について直接判断した裁判例はいまだ現れていなかった。
2 普通地方公共団体が条例により債権の放棄をする場合には,その長による公布を経た当該条例の施行により放棄の効力が生じ,その長による別途の意思表示を要しない。
3 住民訴訟の対象とされている普通地方公共団体の不当利得返還請求権を放棄する旨の議会の議決がされた場合において,当該請求権の発生原因である公金の支出等の財務会計行為等の性質,内容,原因,経緯及び影響(その違法事由の性格や当該支出等を受けた者の帰責性等を含む。),当該議決の趣旨及び経緯,当該請求権の放棄又は行使の影響,住民訴訟の係属の有無及び経緯,事後の状況その他の諸般の事情を総合考慮して,これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であってその裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは,その議決は違法となり,当該放棄は無効となる。
4 市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体に対し公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律所定の手続によらずに上記職員の給与相当額の補助金又は委託料を支出したことが違法であるとして提起された住民訴訟の係属中に,その請求に係る市の当該各団体に対する不当利得返還請求権を放棄する旨の条例が制定された場合において,次の(1)〜(5)など判示の事情の下では,その制定に係る市議会の議決はその裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとはいえず適法であり,当該放棄は有効である。
(1) 当該請求権の発生原因である補助金又は委託料の支出に係る違法事由は,当該各団体における上記職員の給与等に充てる公金の支出の適否に関する同法の解釈に係るものであり,当該各団体においてその支出の当時これが同法の規定又はその趣旨に違反するものであるとの認識に容易に至ることができる状況にはなかった。
(2) 当該各団体には,不法な利得を図るなどの目的はなく,補助金又は委託料の支出という給与等の支給方法の選択に自ら関与したなどの事情もうかがわれない。
(3) 当該各団体の活動を通じて医療,福祉,文化,産業振興,防災対策,住宅供給,都市環境整備,高齢者失業対策等の各種サービスの提供という形で住民に相応の利益が還元されており,当該各団体が不法な利益を得たものということはできない。
(4) 上記条例全体の趣旨は,上記住民訴訟における第1審判決の判断を尊重し,同法の趣旨に沿った透明性の高い給与の支給方法を採択したものといえ,上記条例に係る議会での審議の過程では,上記補助金及び委託料の返還を直ちに余儀なくされることによって当該各団体の財政運営に支障が生ずる事態を回避すべき要請も考慮した議論がされている上,上記補助金及び委託料に係る不当利得返還請求権の放棄によって市の財政に及ぶ影響は限定的なものにとどまる。
(5) 上記住民訴訟を契機に,市から法人等に派遣される職員への給与の支給に関する条例の改正が行われ,以後,市がその職員を派遣し又は退職の上在籍させている団体において市の補助金又は委託料を上記職員の給与等に充てることがなくなるという是正措置が既に採られている。
(3,4につき補足意見がある。)
参照法条
 (1につき)公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律(平成18年法律第50号による改正前のもの)2条1項,公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律6条1項,公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律6条2項,公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律10条1項,公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平成13年神戸市条例第49号。平成21年神戸市条例第28号による改正前のもの)2条1項1号,公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平成13年神戸市条例第49号。平成21年神戸市条例第28号による改正前のもの)2条1項2号,公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平成13年神戸市条例第49号。平成21年神戸市条例第28号による改正前のもの)4条,公益的法人等への職員の派遣等に関する条例(平成13年神戸市条例第49号。平成21年神戸市条例第28号による改正前のもの)10条2号 (2〜4につき) 地方自治法16条2項,地方自治法96条1項10号,地方自治法242条の2第1項4号,平成21年神戸市条例第28号附則5条
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