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高等裁判所 判例集

事件番号

 昭和27(う)1167

事件名

 猥褻文書販売被告事件

裁判年月日

 昭和27年12月10日

裁判所名・部

 東京高等裁判所  第二刑事部

結果

 破棄自判

高裁判例集登載巻・号・頁

 第5巻13号2429頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

 一、 猥褻文書の意義とその判断の基準
二、 猥褻文書販売罪における犯意の成立要件
三、 憲法第二一条の表現の自由と公共の福祉との関係

裁判要旨

 一、 刑法第一七五条にいわゆる「猥褻文書」とは、性器又は性的行為の露骨詳細な記載あるため、一般社会人をして徒らに性慾を興奮又は刺戟せしめ、その正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいい、「猥褻文書」の範囲は、時代の進歩とともに、漸次減縮されて行く傾向にあるものと解せられるのであるが、「猥褻文書」に該当するか否かは、当時の一般社会人の良識に照らして客観的に判断すべきものである。
二、 同条の猥褻文書販売罪における犯意の成立には、当該文書の内容たる記載あることを認識しかつこれを販売することの認識あるをもつて足り、右文書の内容たる記載の猥褻性に関する価値判断についての認識を必要としない。
三、 憲法第二一条の保障する表現の自由も、同法第一二条及び第一三条による制限に服し、国民個人の基本的人権の行使が、公共の福祉のために利用する責任に違反し、権利の濫用となる場合においては、権利の行使たることが否定され、同法第二一条の保障を受けないものと解すべきである。

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