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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行コ)357

事件名

 不開示決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(行ウ)第396号)

裁判年月日

 平成17年7月14日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 司法試験第二次試験の受験者が,司法試験管理委員会委員長に対し,行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号による全部改正前の昭和63年法律95号。ただし,平成15年法律第119号による改正前)13条1項に基づいてした同試験ファイルに記録された自己の試験成績等の処理情報の開示請求に対する一部不開示決定の取消請求につき,同決定のうち,論文式試験の科目別得点及び口述試験の科目別得点を不開示とした部分は,同処理情報を開示することにより同法14条1項1号ニに該当するから適法であるとし,論文式試験の総合順位を不開示とした部分は,同処理情報を開示することにより同号ニ又は同項3号のいずれにも該当しないから違法であるとして,前記請求を一部認容した事例

裁判要旨

 司法試験第二次試験の受験者が,司法試験管理委員会委員長に対し,行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号による全部改正前の昭和63年法律95号。ただし,平成15年法律第119号による改正前)13条1項に基づいてした同試験ファイルに記録された自己の試験成績等の処理情報の開示請求に対する一部不開示決定の取消請求につき,論文式試験の科目別得点が開示された場合には,司法試験予備校において,受験者から募集した多数の再現答案と科目別得点との関係を分析し,高得点答案の共通点,パターンに基づく答案表現例を多数作成して受験者に示すなどの受験指導を行うことが容易に推測され,その結果として,答案のパターン化,画一化に一層の拍車がかかることが明らかであり,論文式試験を通して各受験者の理解力,推理力,判断力,論理的思考力,説得力,文章作成能力等を総合的に評価して採点をするという論文式試験の選抜機能が一層低下すると認められ,口述試験の科目別得点が開示された場合には,どの考査委員が自分に対してどのような採点を行ったのかが明らかになり,低い採点をした考査委員に対していわれのない誹謗中傷がされるおそれがあり,各考査委員の自由で公正中立な採点を行うという基本的な姿勢が萎縮的な影響を受ける可能性があり,考査委員が受験者の法曹としての適格性を総合的に判断するという,本来の採点の在り方を損なうこととなると認められ,その結果,司法試験事務の適正な遂行に支障が及ぶものと認められるから,前記決定のうち,論文式試験の科目別得点及び口述試験の科目別得点を不開示とした部分は,同処理情報を開示することにより同法14条1項1号ニに該当するから適法であるとし,論文式試験の総合順位については,これが開示されたとしても,司法試験予備校等がその開示結果を利用することによって,ある再現答案がその科目における高得点答案であるといえるかについて,現状よりもより精度の高い分析が可能になるとは考え難く,直ちに司法試験に関する事務の適性な執行に支障を及ぼすことはできないことに加え,最終合格者について事実上の格付け行うことになり,個人の能力を表す指標と受け取られる可能性があるなどの各種の弊害が生ずるおそれがあることは否定し難いが,前記の弊害が発生するおそれがあるというだけは同号には該当せず,論文式試験の総合順位を不開示とした部分は,同処理情報を開示したとしても同号ニ又は同項3号のいずれにも該当しないから違法であるとして,前記請求を一部認容した事例

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