裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成17(行コ)64
- 事件名
所得税更正処分取消等,所得税更正処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(行ウ)第562号(甲事件),第563号(乙事件))
- 裁判年月日
平成17年6月29日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 固定資産を取得するために借り入れた資金の利子と所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」
2 業務の用に供される資産の取得に伴い支出された登録免許税と所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」
3 信託受益権の譲渡による譲渡所得と所得税法38条1項の「取得費」の意義
- 裁判要旨
1 固定資産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上,当該固定資産の取得のため借入金の利子は,原則として,所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」には該当しないが,その資産の使用を開始するまでの期間に対応する借入金の利子は,当該資産を取得するための付随費用に当たるものとして,所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した費用」に含まれる。
2 所得税法38条1項の「取得に要した」との文言からは,取得費用は,通常,その費用なしでは当該資産を取得することができないか,著しく困難になるような費用であり,当該資産を取得した後の権利の確保に関する費用は含まないと解されるから,対抗要件としての登記,登録に係る登録免許税は,譲渡所得における取得費に含まれず,むしろ,不動産所得,事業所得等を生ずべき業務について生じた費用(所得税法37条1項)と解されるところ,当該不動産が業務用資産でなく,これらの所得が生じない場合には,必要経費とする余地はないから,課税の公平の観点から,当該資産が譲渡されたときは,その譲渡所得における取得費に含めることが合理的であるが,業務の用に供される資産については,その取得に伴い支出された登録免許税は,所得税法38条1項にいう「資産の取得に要した金額」には含まれない。
3 信託受益権は信託契約上から生じる債権であるが,信託財産の返還請求権者が受益者である場合の信託受益権の譲渡は,実質的には,収益管理契約上の債権債務が付随した信託財産の譲渡であるから,当該信託受益権の譲渡による譲渡所得に係る所得税法38条1項の「取得費」の計算については,信託受益権を固有の譲渡資産とし,これを取得するための付随費用として取得費を計算するのではなく,信託財産の取得費として計算すべきである。
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