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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成13(行ウ)9

事件名

 障害基礎年金不支給決定取消等請求事件

裁判年月日

 平成17年3月3日

裁判所名

 広島地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 大学在学中に疾病又は傷害によって障害を負いながら,国民年金に任意加入していなかったために障害基礎年金を支給しない旨の処分を受けたいわゆる学生無年金障害者が,国は学生無年金障害者の発生を認識し,これを回避するための国民年金制度の確立ないし国民年金法の改正をすべきであったのにそれを怠ったものであるとして,国に対してした国家賠償請求が,一部認容された事例 2 大学在学中に事故又は疾病によって障害を負いながら,国民年金に加入していなかったために障害基礎年金を支給しない旨の各処分を受けたいわゆる学生無年金障害者らが,同人らに適用される国民年金法(平成元年法律第86号による改正前)7条1項1号イが20歳以上の学生を国民年金の強制適用の対象から除外していること,及び同法30条の4が20歳以上の学生を無拠出の障害福祉年金又は障害基礎年金を受給できる対象から除外していることが,それぞれ憲法14条1項等に違反するとしてした前記各処分の取消請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 大学在学中に疾病又は傷害によって障害を負いながら,国民年金に任意加入していなかったために障害基礎年金を支給しない処分を受けたいわゆる学生無年金障害者が,国は学生無年金障害者の発生を認識し,これを回避するための国民年金制度の確立ないし国民年金法の改正をすべきであったのにそれを怠ったものであるとして,国に対してした国家賠償請求につき,前記の者に適用される国民年金法(平成元年法律第86号による改正前)7条1項1号イの,20歳以上の学生等を国民年金の強制適用の対象から除外する規定及び同法30条の4の,20歳以上の学生等を無拠出制の障害福祉年金又は障害基礎年金を受給できる対象から除外する規定が,昭和60年法律第34号による国民年金法の改正の時点においてもそのまま存続していたことは,立法理由の合理的根拠を欠き,立法理由との関連において著しく不合理で立法府の裁量の限界を超えたものであり,合理的理由のない差別として憲法14条1項に違反し,その違憲性の程度,立法時から経過した期間の長さ,救済の必要性,法改正を講ずることの容易性等を総合的に考慮すれば,昭和60年の国民年金法の改正の際,国会及び国会議員が20歳以上の学生を障害基礎年金の受給対象とするために必要な改正を前記各規定について行わなかったことの違憲性の程度は「憲法の一義的な文言に違反している」といえる程度にまで達しており,国家賠償法上も違法というべきであるとして,前記請求を一部認容した事例 2 大学在学中に事故又は疾病によって障害を負いながら,国民年金に加入していなかったために障害基礎年金を支給しない旨の各処分を受けたいわゆる学生無年金障害者らが,同人らに適用される国民年金法(平成元年法律第86号による改正前)7条1項1号イが20歳以上の学生を国民年金の強制適用の対象から除外していること,及び同法30条の4が20歳以上の学生を無拠出の障害福祉年金又は障害基礎年金を受給できる対象から除外していることが,それぞれ憲法14条1項等に違反するとしてした前記各処分の取消請求につき,国民年金法が制定された昭和34年当時,学生が定型的にみて稼得活動に従事していない者であり,かつ,学生が将来被用者年金制度に加入するのが通常であることから国民年金の保険料の掛け捨ての問題を回避するという学生を強制適用の対象から除外する立法理由には一応の合理性があり,また,適用者を一般的に就労していると考えられる年齢により区分することは合理的であるところ,当時の大学,短大及び専修大学への進学率に照らしてこれを20歳で区分し,20歳未満の者が障害状態に陥った場合に所得保障をする必要性が高いことを理由に障害福祉年金の受給対象としたことも合理性があるが,20歳以上の学生も所得保障をする必要性が低いという理由はうかがえず,障害福祉年金の支給対象として20歳以上の学生と20歳未満の者とを区別することは合理性がないところ,20歳以上の学生を強制適用の対象とするのか,無拠出制の障害年金の対象とするのかは立法者の裁量に属する事項であるが,立法者がいずれの方法も採らないことは合理性を欠くというべきであって,昭和34年の国民年金法制定からこのような状況が極めて長期に続いていたのであり,大学,短大及び専修学校への進学率も上昇し,国内居住者のうち20歳以上の学生だけが任意加入しない限り障害基礎年金の受給者となり得ないこととなり,無年金障害者の救済を求める運動が起こっていた等の事情から,障害年金に関して学生に対して任意加入以外の年金的保護を及ぼす必要性が立法府及び政府に現実に認識されていたということができること,年金間の通算制度の不備が相当程度改善されたこと等の昭和60年の国民年金法改正時における事情の下では,任意加入をしていなかった20歳以上の学生の障害基礎年金受給資格を否定する根拠となる前記各規定がそのまま存続していたことは,立法理由の合理的根拠を欠き,立法理由との関連において著しく不合理で立法府の裁量の限界を超えたものであり,合理的理由のない差別として憲法14条1項に違反し,国民年金法(前記改正前)7条1項1号イに基づいてされた前記各処分は違憲無効な規定に基づいてされたもので違法であるとして,前記請求を認容した事例

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