裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成11(行コ)92

事件名

 即位の礼・大嘗祭違憲住民訴訟請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成4年(行ウ)第4号,同第11号,同第35号,同第95号各共同訴訟参加申立事件)

裁判年月日

 平成16年4月16日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 都知事が即位の礼及び大嘗祭関連諸儀式に参列するための庁有自動車の運行に係る費用を都の公金から支出したことが,違憲,違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,元知事個人に対してされた損害賠償請求が,棄却された事例
2 都が行った天皇の即位記念式典等の祝賀事業に係る費用を都の公金から支出したことが,違憲,違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,元知事ら個人に対してされた損害賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 都知事が即位の礼及び大嘗祭関連諸儀式に参列するための庁有自動車の運行に係る費用を都の公金から支出したことが,違憲,違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,元知事個人に対してされた損害賠償請求につき,前記諸儀式のうち国事行為としての「即位礼正殿の儀」等の儀式の実施が政教分離原則に違反するなど違憲である場合,地方公共団体がその共同施行者となり,又は経済的援助を行うなど積極的に加担する行為を行ったときは,その行為は国の行為と同様に違憲と評価され得るし,地方公共団体の関与が,その長等がこのような儀式に単に儀礼的に参列するにとどまる程度にすぎないとしても,およそ国の行為が違憲である場合において当該行為に関与することは地方公共団体が行う事務に当たらず,そのために公金を支出することは違法と評価されることがあり得るとした上,「即位礼正殿の儀」は,その様式の面で宗教的色彩が完全には払拭されておらず,宗教的意義を有することを完全には否定できないから,これを国事行為として行ったことにより,国は宗教とかかわり合いを持ったものであるが,その目的は,日本国及び日本国民統合の象徴である天皇が即位を公に宣明するとともに,その即位を内外の代表が祝うという専ら世俗的なものであり,その効果は,神道を援助,助長,促進し,又は他の宗教に圧迫,干渉等を加えるものとはいえず,国と神道のかかわり合いの程度は極めて微弱であって,我が国の社会的,文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものとはいえないから,その実施は憲法20条3項により禁止される宗教的活動には当たらず,前記知事が同儀式に参列したことにより都は宗教とのかかわり合いを持ったものではあるが,同知事は内閣総理大臣の招きに応じ,社会的儀礼として天皇の即位に祝意を表すという世俗的目的から参列したものであり,その行為は何ら宗教的意義を持つものではないから前記宗教的活動には当たらず,また,前記諸儀式のうち皇室行事としての「大嘗宮の儀」等の儀式は宗教上の儀式としての性格を有し,これに前記知事が参列したことにより都は宗教とのかかわり合いを持ったものではあるが,天皇家の世襲によるいわゆる代替わりは天皇の即位と当然に結び付くという意味において,これらの儀式は,公的な即位と密接な関係にあるから,国又は地方公共団体がその代表者等をこれに参列させ,社会的儀礼として敬意と祝意を表させるなどの公的に相応の配慮をすることは許容されるところ,前記知事が参列したのはこのような趣旨からであって,その目的,効果に照らし,前記宗教的活動に当たらず,さらに,前記各儀式に都知事が参列したことは,国民主権原理,象徴天皇制に違反せず,思想及び良心の自由を侵害するものでもないから,前記支出は違憲,違法とはいえないとして,前記請求を棄却した事例
2 都が行った天皇の即位記念式典等の祝賀事業に係る費用を都の公金から支出したことが,違憲,違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,元知事ら個人に対してされた損害賠償請求につき,都が日本国及び日本国民統合の象徴である天皇の即位を祝うために自らの判断で実施した前記事業は,その目的及び実施の態様等からみて宗教的要素を持つものとも,宗教とのかかわり合いを持つものともいえないから,同事業の実施が政教分離原則に違反するとはいえず,また,同事業は,国民主権原理,象徴天皇制に違反せず,思想及び良心の自由を侵害するものでもないから,前記支出は違憲,違法とはいえないとして,前記請求を棄却した事例

全文