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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成11(行コ)243

事件名

 即位儀式への公務参加手当返還,損害賠償等代位請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成3年(行ウ)第8号等)

裁判年月日

 平成14年9月19日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 知事が即位礼正殿の儀に,県議会議長が同儀及び大嘗宮の儀に出席したことが政教分離の原則等に違反し違憲,違法であり,これらに係る旅費の支出も違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの)に基づき,同知事及び同議長に対してされた損害賠償請求等が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 知事が即位礼正殿の儀に,県議会議長が同儀及び大嘗宮の儀に出席したことが政教分離の原則等に違反し違憲,違法であり,これらに係る旅費の支出も違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号(平成14年法律第4号による改正前のもの)に基づき,同知事及び同議長に対してされた損害賠償請求等につき,憲法20条3項にいう「宗教的活動」とは,宗教とのかかわり合いを有する行為のうち,そのかかわり合いが相当とされる限度を超えるものに限られ,当該行為の目的が宗教的意義を持ち,その効果が宗教に対する援助,促進又は圧迫,干渉等になるような行為をいうものと解すべきであるところ,即位礼正殿の儀は,皇室典範の規定に基づく国事行為たる「即位の礼」として挙行されたものであって,その趣旨,目的,内容に照らし,これを宗教的行事ということは困難であり,仮に宗教的色彩があったとしても極めて徴弱なものであって,前記県知事らが参列した目的は,日本国及び日本国民統合の象徴である天皇に対する礼会的儀礼を尽くすものであり,その効果も,特定の宗教に対する援助,助長,促進又は圧迫,干渉等になるようなものではないから,憲法上の政教分離原則及びそれに基づく政教分離規定に違反するものではなく,さらに,大嘗宮の儀は天皇が皇祖及び天神祇に対して五穀豊穣等を感謝,祈念し,神道施設が設置された場所において,神道の儀式にのっとって行われるものであるから,これが,宗教的要素を有する儀式であることは否定し難いが,大嘗宮の儀が7世紀末ころ以降皇位継承の際に行われてきた皇室の重要な伝統儀式であって,参加の態様も宮内庁長官からの案内を受けて参列したに過ぎないなどの事情に照らすと,参加したことの目的は,日本国の象徴であり,日本国民統合の象徴である天皇の皇位継承儀式に儀礼を尽くすというものであり,その効果も,特定の宗教を援助,助長,促進する効果を与えたということもできないから,憲法上の政教分離則及びそれに基づく政教分離規定に違反するものではなく,前記公金支出に,財務会計上の違法はないというべきであるとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

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