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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成10(行ウ)44

事件名

 処分取消請求事件

裁判年月日

 平成12年3月28日

裁判所名

 神戸地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 登録免許税法31条2項に基づく所轄税務署長に過誤納金還付通知をすべき旨の請求に対し,登記官のする還付通知をしない旨の通知の行政処分性 2 登録免許税法31条2項に基づいてされた所轄税務署長に過誤納金還付通知をすべき旨の請求に対し,登記官のした還付通知をしない旨の通知が存する場合に,当該通知の取消しを求め,その取消しを得て還付通知を経た上で過誤納金として還付を受けるという手続によることなく,納付した登録免許税が法律上の原因を欠くものであることを理由として,国に対して直接不当利得の返還を請求することの可否 3 建物の保存登記に際し,阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則(平成7年大蔵省令第12号)20条1項の定める被災証明書の添付をせずに,登録免許税を納付した者が,同登記については阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(平成7年法律第11号,平成12年法律第13号による改正前)37条1項により同税は課せられないものであり,また,同項による大蔵省令への委任は白紙委任であるから無効であって,前記納付は誤納付であるとして,国に対してした前記納付に係る登録免許税額相当額の不当利得返還請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 登録免許税は,登記の時に納税義務が成立し,その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する,いわゆる自動確定の国税であり,その税額が公定力をもって確定されるわけではないので,登録免許税法31条2項に基づく所轄税務署長に過誤納金還付通知をすべき旨の請求に対し,登記官のする還付通知をしない旨の通知は,単に還付の事務を円滑ならしめるための登記官の認識の表示にすぎず,過誤納税額の還付請求権者の法律的地位を変動させる法的効果を有するものではないから,前記還付通知をしない旨の通知は取消訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 登録免許税は,登記の時に納税義務が成立し,その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する,いわゆる自動確定の国税であるから,その納付が実体法上理由を欠くときは,納付された税額は当然に誤納金となり,当該納付をした者は,当該誤納金の還付請求権(公法上の不当利得返還請求権)を取得するものと解されるところ,登録免許税法31条2項に基づく所轄税務署長に過誤納金還付通知をすべき旨の請求に対し,登記官のする還付通知をしない旨の通知は,単に還付の事務を円滑なものとするための登記官の認識の表示にすぎず,同通知がされても,前記取得した誤納金の還付請求権に消長を来すものではないのであって,同誤納金について,登記等を受けた日から1年以内に還付通知請求をしない限り,その返還を求めることができなくなるとは解されず,また,直接不当利得の返還を求めた場合の還付加算金の起算日が法令上定められていないからといって,法律が直接不当利得返還請求をすることを禁じたものとも解されないことからすると,同条は,登録免許税の納付につき法律上の原因を欠くことを理由として,当該誤納金について国に対し直接不当利得としてその返還を求めることを禁ずる趣旨ではないと解されるから,前記還付通知をしない旨の通知が存する場合でも,納付した登録免許税が法律上の原因を欠くものであることを理由として,国に対して直接不当利得の返還を請求することができる。 3 建物の保存登記に際し,阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律施行規則(平成7年大蔵省令第12号)20条1項の定める被災証明書の添付をせずに,登録免許税を納付した者が,同登記については阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(平成7年法律第11号,平成12年法律第13号による改正前)37条1項により同税は課せられないものであり,また,同項による大蔵省令への委任は白紙委任であるから無効であって,前記納付は誤納付であるとして,国に対してした前記納付に係る登録免許税額相当額の不当利得返還請求につき,同項は,どのような手続的課税要件を大蔵省令に委任しているのか明らかでなく,いわば白紙的に委任しているものというほかないから,その委任は租税法律主義に反して無効であり,したがって,同規則20条1項の定める登記申請書への被災証明書の添付をもって免税要件とすることはできないから,前記納付は誤納付に当たり,国は,納付された登録免許税額と同額を不当利得として返還する義務を負うとして,前記請求を認容した事例

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