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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成11(行コ)140

事件名

 相続税更正異議処分取消、相続税更正処分取消請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成8年(行ウ)第51号、同第52号)

裁判年月日

 平成12年1月26日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 相続税更正処分に関する事実が国税不服審判所長に対する審査請求に係る審査請求書に記載されなかったが,国税通則法104条4項,2項により前記更正処分についてもあわせ審理された場合につき,同更正処分の取消請求は,審査請求を経ていないとして,不適法とされた事例 2 相続財産のうち連帯保証債務及び物上保証債務を控除するという内容の相続税の更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消請求が,当該各債務は相続税法14条1項の「確実と認められる」債務に該当しないとして,棄却された事例

裁判要旨

 1 相続税更正処分に関する事実が国税不服審判所長に対する審査請求に係る審査請求書に記載されなかったが,国税通則法104条4項,2項により前記更正処分についてもあわせ審理された場合における同更正処分の取消請求の適法性につき,国税通則法87条が審査請求について,必ず書面によるものとし,審査請求書の記載要件を明確に定めたのは,異議申立て又は審査請求の対象を書面により明確に特定し,過誤等の発生を防止するためであると認められるから,審査請求人がいかなる処分について審査請求をしているかについては,審査請求人の提出に係る審査請求書の記載を基準として定められるというべきであり,必ずしも審査請求書に記載された審査請求に係る処分欄記載の処分に限定されるものではないが,少なくとも,審査請求書の記載を合理的に解釈しても,不服を申し立てていると認められない処分については,審査請求の対象とされていないといわざるを得ないところ,前記審査請求書には,前記更正処分に触れたところはまったくなく,同審査請求が同更正処分をもその対象としていたと認めることはできないとした上,国税通則法104条4項に規定するあわせ審理は,同一の国税について複数の更正決定等がされた場合,審理の重複,判断の矛盾,抵触等を避け,納税者の手数を軽減しつつ簡易迅速な権利救済を図るなどの趣旨から,国税不服審判所長等は,納税者が不服申立てをしていない他の更正決定等についても職権で審理を行うことができることとしたものであるが,前記あわせ審理がされた場合であっても,不服申立てのされていない他の更正決定等を取り消す必要がないときには,不服申立てがされた更正決定等についてのみ裁決をすることになるものと解されるところ,前記審査請求に対する裁決の主文及び理由から前記更正処分については裁決していないことが明らかであるから,前記のあわせ審理がされたことをもって,前記更正処分についても審査請求を経ているということはできないとして,前記請求を不適法とした事例 2 相続財産のうち連帯保証債務及び物上保証債務を控除するという内容の相続税の更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消請求につき,連帯保証債務及び物上保証債務,原則として,相続税法14条1項に規定する「確実と認められる」債務には該当しないが,相続開始時において,主債務者が弁済不能の状態にある場合には,保証人において保証債務の履行をしなければならないことが確実である上,履行後に主債務者に対し求償権を行使して損失のてん補を受けることが不可能であるから,このような場合には,例外的に当該各債務も同項の「確実と認められる」債務に該当するというべきであるとした上,主債務者が,相続開始当時,弁済不能の状態にあるか否かは,当該債務者について,破産,和議,会社更生又は強制執行等の手続が開始し,若しくは事業の閉鎖等により債務超過の状態が相当期間継続していて他からの融資を受ける見込みもなく,再起の目途が立たないなど,主債務者に対し求償権を行使しても,事実上回収不可能な状況にあることが客観的に認められるか否かにより判断するのが相当であるところ,前記相続開始当時,主たる債務者が弁済不能の状態にあり,その債権者から前記各債務の履行が確実に求められていたとは認められず,前記各債務を履行した場合に,主債務者に対する求償が不可能であったとも認められないから,前記各債務をもって,同項の「確実と認められる」債務に当たるとは認められないとして,前記請求を棄却した事例

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