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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成3(行ウ)8

事件名

 平成3年(行ウ)第8号即位儀式への公務参加手当返還請求事件(以下「甲事件」という。) 平成4年(行ウ)第1号損害賠償等代位請求事件(以下「乙事件」という。)

裁判年月日

 平成11年9月27日

裁判所名

 横浜地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 知事が即位礼正殿の儀に,県議会議長が同儀及び大嘗宮の儀に出席したことが政教分離の原則等に違反し違憲,違法であり,これらに係る旅費の支出も違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同知事及び同議長に対してされた損害賠償請求等が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 知事が即位礼正殿の儀に,県議会議長が同儀及び大嘗宮の儀に出席したことが政教分離の原則等に違反し違憲,違法であり,これらに係る旅費の支出も違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同知事及び同議長に対してされた損害賠償請求等につき,憲法20条3項にいう「宗教的活動」とは,宗教とのかかわり合いを有する行為のうち,相当とされる限度を超えるものがこれに当たると解すべきであり,具体的には,当該行為の目的が宗教的意義を持ち,その効果が宗教に対する援助,促進又は圧迫,干渉等になるような行為をいうものと解すべきであって,その判断にあたっては,当該行為の主宰者が宗教家であるかどうか,その順序作法が宗教の定める方式にのっとったものであるかどうかなど,当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく,当該行為の行われる場所,当該行為に対する一般人の宗教的評価,当該行為者が当該行為を行うについての意図,目的及び宗教的意義の有無,程度,当該行為の一般人に与える効果,影響等,諸般の事情を考慮し,社会通念に従って客観的に判断しなければならないものというべきであるとした上,即位礼正殿の儀は,政府が象徴天皇制を定める憲法理念を具体化する中で伝統的な儀式の様式を踏襲しつつ,政教分離の観点から宗教的色彩を弱めることとしたことなどにより,その宗教的な効果は一般的には極めて小さかったものということができるから,目的効果基準に照らし,宗教とのかかわり合いが相当とされる限度を超えたものとは認められず,憲法20条3項に違反するとはいえないし,また,天皇を中心とする皇室祭祀を仮に皇室神道と呼ぶにしても,皇室は,特定の宗教の信仰,礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体であるとはいえないから,憲法20条1項後段にいう「宗教団体」にも,また,憲法89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」にも当たらないというべきであるところ,同人らは,即位礼委員会委員長である内閣総理大臣から招待を受け,国事行為としての即位礼正殿の儀に参列したものであり,それ自体は,地方自治法2条2項にいう地方公共団体の事務に当たるものというべきであるから,専決権者の指揮監督の任にある知事が参列の旅費として公金を支出したことに財務会計行為上の違法があるとはいえないし,同人らがこれを受領したことにも違法があるとはいえないものであり,さらに,大嘗宮の儀は神に対する信仰に基づく儀式というべきであるから,これが,宗教上の性格を有することは否定し難いが,前記県議会議長が大嘗宮の儀に参加したことの目的は,日本国の象徴であり,日本国民統合の象徴である天皇の皇位継承儀式に儀礼を尽くし,祝意を表するという世俗的なものであり,その効果もそれ以上のものではなく,もとより,特定の宗教を援助,助長,促進する効果を与えたということもできないから,これをもって,憲法20条3項にいう宗教的活動をしたと認めることはできず,また,憲法20条1項後段の特権を付与したと認めることもできないから,前記県議会議長が大嘗宮の儀に参列したことは,公務として許された範囲内の行為というべきであるから,前記公金支出に,財務会計上の違法はないというべきであるとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

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