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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成5(行コ)163

事件名

 所得税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日

 平成6年6月23日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 いわゆる現物取引に係る株式の売却による所得につき,過去の一定時点以前の当該株式の取引内容を直接的な資料によって認定することができない場合に,前記時点の保有株式数を推認し,取得開始時から前記時点までの間の証券取引所における月中終値の平均値を用いて,その取得原価を推計する方法に合理性があるとした事例 2 2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券について雑所得となる譲渡益を計算する際に,必要経費の額の算出を総平均法に準ずる方法によって行うものとする所得税法施行令118条と憲法29条

裁判要旨

 1 いわゆる現物取引に係る株式の売却による所得につき,所得税法施行令118条に基づき総平均法に準ずる方法によって必要経費を算出するに当たり,過去の一定時点以前の当該株式の取引内容を直接的な資料によって認定することができないため,前記時点の保有株式数を推認した上,納税者の自認する取得開始時から前記時点までの間の証券取引所における銘柄別の月中終値の平均値を求め,これを用いてその取得原価を推計する方法に合理性があるとした事例 2 2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券について雑所得となる譲渡益を計算する際に,所得の計算上必要経費に算入する当該株式の取得原価としてどのようなものを採用すべきかは困難な問題であるが,所得税法48条1項,同法施行令105条が定める総平均法は,企業会計処理上の合理性が一般に認められ,利益操作を排除し,取得単価を平均化する合理的な方法であり,雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額として,売却直前に保有していた前記銘柄の株式を取得した価額の総平均の値を取得原価として採用するのも一つの合理的な方法であるから,前記必要経費の額の算出を総平均法に準ずる方法によって行うものとする同法施行令118条の定めは憲法29条に違反しない。

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