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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成5(行コ)74

事件名

 所得税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日

 平成6年3月30日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 推計課税の本質及び推計の合理性の意義 2 所得税の更正の取消訴訟において納税者が行う収入及び経費実額の主張立証の法的性質 3 建築業,飲食業,コンクリートポンプ圧送業及び不動産貸付業を営む白色申告者の事業所得金額につき,反面調査により把握した収入金額に基づき各事業ごとに同業者の平均所得率を用いて前記事業所得金額を推計してした所得税の更正が,適法であるとされた事例

裁判要旨

 1 所得税法156条は,所得の実額が捕そくできない場合においても,租税負担の公平の原則上更正又は決定をすることを回避し,又は放棄することは許されないから,間接的な資料によって所得を認定して更正又は決定をしなければならないという趣旨を規定したものであり,間接的な資料を用いて所得を認定する方式である推計課税は,直接資料を用いて所得を認定する方式である実額課税に代わるものではあるが,所得の実額の近似値を求める概算課税の性質を有しているというべきであるから,推計課税における推計の合理性は,所得の実額との関係で厳密な整合性を有する必要はなく,実額課税に代わる方式にふさわしいといい得る程度のもので足りるというべきである。 2 所得税の更正の取消訴訟において納税者が直接資料によって収入及び経費の実額を主張立証することは,税務署長の抗弁に対する単なる反証ではなく,自らが主張,証明責任を負うところの再抗弁であり,しかも,その再抗弁においては単に収入又は経費の実額の一部又は全部を主張,証明するだけでは足りず,収入及び経費の実額をすべて主張,証明することを要するというべきである。 3 建築業,飲食業,コンクリートポンプ圧送業及び不動産貸付業を営む白色申告者の事業所得金額につき,反面調査により把握した収入金額に基づき各事業ごとに同業者の平均所得率を用いて前記事業所得金額を推計してした所得税の更正について,推計の必要性及び合理性を認めることができ,また,前記の者は,経費の実額を主張立証するにとどまる上,その主張する実額をもって所得金額を算定することもできないなどとして,前記更正が適法であるとされた事例

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