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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成4(行コ)93

事件名

 相続税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日

 平成5年3月15日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 相続税法22条の定める「当該財産の取得の時における時価」を相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達,平成3年12月18日付け課評2ー4課資1ー6により「財産評価基本通達」と題名改正,同題名改正前)の定める評価方式以外の方法で評価することの可否 2 相続開始直前に被相続人が多額の金員の借入れを行って土地を取得し,相続開始後に相続人が当該土地を売却して借入金を返済した場合における当該土地の相続財産としての評価につき,客観的な市場価格を算定してした相続税更正処分等の取消請求が棄却された事例

裁判要旨

 1 相続税法22条の定める「当該財産の取得の時における時価」とは相続開始時における当該財産の客観的な交換価格をいい,市場価格と同義であるが,課税実務上は,個別的評価の不都合を避けるため,相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達,平成3年12月18日付け課評2ー4課資1ー6により「財産評価基本通達」と題名改正,同題名改正前)による評価方式によって相続財産の評価を行うこととされており,これもまた同法22条にいう「時価」であるといえるから,特別の事情がない限り同通達に定められた評価方式によるべきであるが,同通達による評価方式を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって,富の再分配機能を通じて経済的平等を実現するという相続税の目的に反し,実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであるなどの特別な事情がある場合には,同通達による評価額をもって同法22条にいう「時価」ということはできず,例外的に他の合理的な方式によることが許されるのであり,このような評価が,租税法律主義に反するということはできない。 2 相続開始直前に被相続人が多額の金員の借入れを行って土地を取得し,相続開始後に相続人が当該土地を売却して借入金を返済した場合につき,当該行為は,相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17国税庁長官通達,平成3年12月18日付け課評2ー4課資1ー6により「財産評価基本通達」と題名改正,同題名改正前)に定められた方法による評価額と現実の取引価額との間に生じている開差を利用して相続税の負担の軽減を図るという目的で行われたものであり,同通達によらないことが許される特別の事情があるから,相続税法22条の「時価」として,同通達によらず,当該土地の取得価額を基準に客観的な市場価格を算定してした相続税更正処分等は適法であるとして,同処分等の取消請求が棄却された事例

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