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行政事件 裁判例集

事件番号

 昭和62(行ウ)115

事件名

 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日

 平成3年12月19日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 納税者が,税務調査の段階で帳簿等を提出せず,実額課税不能の状況を作出したため推計課税がされたとしても,実額課税と推計課税とは所得の認識の方法の別をいうにすぎず,所得税更正処分等取消訴訟においては,課税処分の認定,判断が真実の所得額との対比において正しいものであるか否かという観点から判断されるべきであるから,当該訴訟で実額による所得の主張をすることが時機に後れ,信義に反するものとして許されないと解すべき根拠はないとした事例 2 所得税更正処分取消訴訟において,課税庁の主張する収入金額に捕捉漏れの可能性がある場合における実額による必要経費の認定の限度 3 写植を業とする者に対して,実額で把握した売上金額に同業者平均経費率を乗ずる方法によって必要経費を推計してされた所得税更正処分が,事業に関する経費として実額で認められる支出金額は,課税庁が推計により主張する売上金額と対比して明らかに過大に失するとまではいえないから,当該支出金額を当該売上金額に対応する必要経費として所得金額を算出すべきであり,これによって算出した事業所得額は当該処分の基礎となった事業所得額を下回るとして,一部取り消された事例

裁判要旨

 2 所得税更正処分取消訴訟において課税庁が調査によって把握した収入金額に基づき必要経費を推計した場合において,実額反証により納税者が事業に関する経費として支出したと認められる一定の金額が,課税庁の主張する事業による一定の具体的な収入金額と個別に対応する必要経費に該当するか否かについて疑問の余地があり,収入金額に捕捉漏れの可能性があるときでも,基本的には収入金額と必要経費の額の双方について課税庁に主張立証責任があるから,当該支出金額を一律に必要経費の額に算入することを認めないことは相当でなく,課税庁の主張する収入金額に一定の金額の捕捉漏れがあることが具体的に明らかになったとき,又は当該収入金額と経費としての当該支出金額とを対比して得られた経費率が同業者の経費率に比べて明らかに過大に失すると認められるようなときにはじめて,当該支出金額の総額をもって必要経費額とすることが不合理となるというべきである。

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