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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)271等

事件名

 法人税更正処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成18年9月5日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 法人税について更正の請求をした者が,増額更正処分を受け,その後,前記更正の請求について更正すべき理由がない旨の通知処分を受け,同処分に対して審査請求を経た上,前記増額更正処分及び前記通知処分の取消請求の訴えを提起した場合につき,前記通知処分に対する審査請求を経ていれば,前記増額更正処分に対する審査請求を経由したものといえるとして,前記各訴えが適法とされた事例 
2 法人税に係る同一の納税義務に関し,更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分と増額更正処分とがされた場合につき,前記通知処分の取消しを求める訴えは,取消しを求める利益又は必要がないとして,不適法とされた事例 
3 外国法人の発行済株式の全てを保有する内国法人に対し,同外国法人が租税特別措置法66条の6第1項所定の特定外国子会社等に該当するとして,同項の課税対象留保金額に相当する金額を前記内国法人の所得の金額の計算上益金の額に算入してした更正処分が,適法とされた事例

裁判要旨

 1 法人税について更正の請求をした者が,増額更正処分を受け,その後,前記更正の請求について更正すべき理由がない旨の通知処分を受け,同処分に対して審査請求を経た上,前記増額更正処分及び前記通知処分の取消請求の訴えを提起した場合につき,増額更正処分がされた後も維持された更正の請求は,税額を,増額更正処分に係る額から更正の請求に係る額まで引き下げることを要求する行為であって,更正の請求に理由がない旨の通知処分は,これらの要求をいずれも拒否する行為であると理解すべきであるから,更正の請求に理由がない旨の通知処分に対する不服申立てには,必然的に,税額の減額要求を認めなかったことに対する不服と,税額が増額されたことに対する不服とが含まれているものと理解することができ,したがって,更正の請求に理由がない旨の通知処分に対して不服申立てをしていれば,増額更正処分に対しても不服申立てを経由したものということができるから,不服申立前置の要件に欠けるところはないとして,前記各訴えを適法とした事例 
2 法人税に係る同一の納税義務に関し,更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分と増額更正処分とがされた場合につき,増額更正処分は,納付すべき税額全体にかかわり,実質的には申告税額等を正当でないものとして否定し,これに増額変更を加えて税額の総額を確定するものであることから,増額更正処分の内容は,更正すべき理由がない旨の通知処分の内容を包摂する関係にあるということができ,また,同一の納税義務にかかわる両処分の訴訟が別個に係属することにより生ずる審理判断の重複や抵触を避ける必要があり,更に,増額更正処分に対する取消訴訟の中で,更正すべき理由がない旨の通知処分における減額更正をしない旨の判断に存する違法を主張して,申告税額等を下回る額にまで増額更正処分の取消しを求めることもできると解されるから,増額更正処分とは別に更正すべき理由がない旨の通知処分を争う利益や必要性はないとして,前記通知処分の取消しを求める訴えを不適法とした事例 
3 外国法人の発行済株式の全てを保有する内国法人に対し,同外国法人が租税特別措置法66条の6第1項所定の特定外国子会社等に該当するとして,同項の課税対象留保金額に相当する金額を前記内国法人の所得の金額の計算上益金の額に算入してした更正処分につき,外国の法令により課される税が法人税法69条1項の外国法人税に該当するかどうかは,同項を受けて外国法人税の意義を定めた規定である同法施行令141条1項等の規定に照らして判断すべきところ,同項は,先進諸国において通用している一般的な租税概念を前提とし,そのうち,「法人税」,「法人の所得を課税標準として課される税」に相当するものを控除の対象にしているものと解されるところ,一般に,租税の特性として,(1)公共サービスの提供に必要な資金を調達することを目的とし(租税の公益性),それ以外の目的で課される罰金,科料,過料,交通反則金等のような違法行為に対する刑事上,行政上の制裁の性質を持つ金銭給付とは区別され,(2)国民の富の一部を一方的,強制的に国家の手に移す手段であり(租税の強行性),租税が国民の財産権の侵害の性質を有することから,租税の賦課,徴収が必ず法律の根拠に基づいて行われなければならない(租税法律主義)とされ,(3)特別の反対給付の性質を持たない点で,各種の使用料,手数料,特権料等と区別され,(4)国民にその能力に応じて一般的に課される点で,特定の事業の経費に充てるために,その事業に特別の関係のある者から,その関係に応じて徴収される負担金と区別され,(5)金銭給付であることを原則とする点を挙げられるから,前記外国法人税に該当するかの判断に当たっては,当該外国の法令によって課される税が,このような租税概念に当てはまるのかどうかについて検討する必要があり,その際,我が国の法人税との比較も判断の一要素となり得るとした上,前記外国法人がその本店所在地国で納付した税は,基本的性格を異にする四つの税制が当該法人の選択によって適用され得るという点で税の強行性の概念と相容れず,適用税率について課税権者に広範な裁量の余地を許容する点で租税法律主義に反するものであり,また,税の徴収手段において実効性に欠けるなど,同国における法人税制は,我が国における法人税制とはおよそかけ離れた制度になっていることはもとより,一般的な租税概念に反するものといわざるを得ないから,前記税は,法人税法69条1項の外国法人税に該当しないとして,前記更正処分を適法とした事例

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