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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ウ)145

事件名

 一般労働者派遣事業許可取消処分差止請求事件

裁判年月日

 平成18年10月20日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 一般労働者派遣事業の許可を受けた者が,18歳に満たない者を深夜業に使用したとの事実により,罰金刑の判決を言い渡されたことから,厚生労働大臣が労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律14条に基づき,前記許可の取消処分を行おうとしているとしてした同取消処分の差止めの訴えが,適法とされた事例 2 一般労働者派遣事業の許可を受けた者が,18歳に満たない者を深夜業に使用したとの事実により,罰金刑の判決を言い渡されたことから,厚生労働大臣が労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律14条に基づき,前記許可の取消処分を行おうとしているとしてした同取消処分の差止めの訴えが,適法とされた事例 3 一般労働者派遣事業の許可を受けた者が,18歳に満たない者を深夜業に使用したとの事実により,罰金刑の判決を言い渡されたことから,厚生労働大臣が労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律14条に基づき,前記許可の取消処分を行おうとしているとしてした同取消処分の差止め請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 一般労働者派遣事業の許可を受けた者が,18歳に満たない者を深夜業に使用したとの事実により,罰金刑の判決を言い渡されたことから,厚生労働大臣が労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律14条に基づき,前記許可の取消処分を行おうとしているとしてした同取消処分の差止めの訴えにつき,前記一般労働者派遣事業は,社会的評価や信用がその重要な経営上の前提となっているということができ,許可取消処分が行われるならば,その営業の基盤に甚大な影響が生じ,事後的に,処分が取り消され,あるいは,その執行停止が認められたとしても,さらには,金銭賠償が行われたとしても,それによって,有形,無形の損害を完全に填補した上,従前と同じ規模,態様で営業活動を行うことができないおそれが存在するだけではなく,営業活動を再開,継続することそれ自体が不可能となるおそれも存在するとみることができるから,行政事件訴訟法37条の4第1項の「重大な損害を生ずるおそれがある場合」に当たるとして,前記訴えを適法とした事例 2 一般労働者派遣事業の許可を受けた者が,18歳に満たない者を深夜業に使用したとの事実により,罰金刑の判決を言い渡されたことから,厚生労働大臣が労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律14条に基づき,前記許可の取消処分を行おうとしているとしてした同取消処分の差止めの訴えにつき,前記刑事事件では,控訴審でも控訴棄却の判決を受けていること,前記有罪判決を受けたことが同条1項1号,同法6条1号の一般労働者派遣事業の許可取消事由に該当すること,処分行政庁の所部担当者において,有罪判決が確定すれば,前記取消処分を必ず行う方針である旨説明していることから,近い将来,前記取消処分が行われる相当の蓋然性が存在するというべきであり,訴えの利益が認められるとして,前記訴えを適法とした事例 3 一般労働者派遣事業の許可を受けた者が,18歳に満たない者を深夜業に使用したとの事実により,罰金刑の判決を言い渡されたことから,厚生労働大臣が労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律14条に基づき,前記許可の取消処分を行おうとしているとしてした同取消処分の差止請求につき,同条1項1号に該当する場合において,必要的に同法5条1項の許可を取り消さなければならないと解するのは適当ではなく,むしろ,同法6条1項1号の趣旨に照らして,当該欠格事由に該当することは十分に考慮し,原則として取り消す姿勢で臨むべきであるとしても,厚生労働大臣は,個々の事案ごとに,刑罰に処せられた行為の性質,態様,当該事業者が労働者派遣事業を継続した場合の弊害発生のおそれ,許可が取り消された場合の当該事業者その他利害関係人の被る不利益等を総合的に勘案した上で,例外的に許可を取り消さないことをその裁量に基づいて決し得るものとするのがより合理的な解釈というべきであるとした上,前記許可取消処分を行うことが裁量権の範囲を超え,又はその濫用となるとはいえないとして,前記請求を棄却した事例

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