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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)31

事件名

 法人税更正処分等取消請求控訴事件

裁判年月日

 平成19年1月30日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 同族会社が,その子会社が新たに発行する株式全部を前記同族会社の関連会社に著しく有利な価額で割り当てることによって,前記同族会社が保有していた前記子会社の株式の資産価値を前記関連会社に移転させたことが,法人税法22条2項に規定する「無償による資産の譲渡」に当たるとされた事例
2 同族会社が,その子会社が新たに発行する株式全部を前記同族会社の関連会社に著しく有利な価額で割り当てることによって,前記同族会社が保有していた前記子会社の株式の資産価値を前記関連会社に移転して,法人税法22条2項に規定する無償による資産の譲渡を行った場合において,当該譲渡の対象となった子会社の資産の額を算定するため,子会社の保有する非上場会社の株式の価額を評価するに当たっては,いわゆる時価純資産価額方式によるべきであり,かつ,その際,法人税額等相当額を控除すべきであるとされた事例
3 同族会社が,その子会社が新たに発行する株式全部を前記同族会社の関連会社に著しく有利な価額で割り当てることによって,前記同族会社が保有していた前記子会社の株式の資産価値を前記関連会社に移転して,法人税法22条2項に規定する無償による資産の譲渡を行った場合において,当該譲渡の対象となった子会社の資産の額を算定するため,子会社が株式を保有する非上場会社の保有に係る非上場会社の株式の価額を評価するに当たり,いわゆる時価純資産価額方式によるべきであり,かつ,その際,法人税額等相当額を控除すべきでないとされた事例
4 同族会社が,その子会社が新たに発行する株式全部を前記同族会社の関連会社に著しく有利な価額で割り当てることによって,前記同族会社が保有していた前記子会社の株式の資産価値を前記関連会社に移転して,法人税法22条2項に規定する無償による資産の譲渡を行った場合において,当該譲渡の対象となった子会社の資産の額を算定するため,子会社の保有する非上場会社の株式の価値を評価するに当たり,いわゆる時価純資産価額方式によるべきであり,かつ,その際,法人税額等相当額を控除すべきでないとされた事例

裁判要旨

 1 同族会社が100パーセント出資する子会社が,新たに発行する株式全部を前記同族会社の関連会社に著しく有利な価額で割り当てたことにつき,同族会社は,自己の子会社に対する持株割合を6.25パーセント(16分の1)に激減させ,関連会社の持ち分割合を93.75パーセント(16分の15)とすることによって,子会社の株式に表章されていた同社の資産価値の大部分を,対価を得ることなく関連会社に移転させることを意図したものということができ,かつ,上記新株発行は,同族会社,子会社及び関連会社等の各役員が意思を相通じて行ったものであって,前記資産価値の移転は,同族会社が意図し,関連会社が了解したところが実現したものということができるから,法人税22条2項の取引,すなわち「無償による資産の譲渡」に当たるとした事例
2 同族会社が,その子会社が新たに発行する株式全部を前記同族会社の関連会社に著しく有利な価額で割り当てることによって,前記同族会社が保有していた前記子会社の株式の資産価値を前記関連会社に移転して,法人税法22条2項に規定する無償による資産の譲渡を行った場合において,当該譲渡の対象となった子会社の資産の額を算定するため,子会社の保有する非上場会社の株式の価値を評価するに当たり,財産評価基本通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前)185が定める1株当たりの純資産価額の算定方式を法人税課税においてそのまま採用すると,課税上の弊害が生ずる場合には,これを解消する修正を加えるべきであるが,このような修正を加えた上で同通達所定の1株当たりの純資産価額の算定方式にのっとって算定された価額は,一般に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして,法人税基本通達(昭和44年直審(法)25,平成12年課法2−7による改正前)9−1−14(4)にいう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきであるところ,前記財産評価基本通達185は,企業の継続を前提とした場合においても,1株当たりの純資産価額の算定に当たり法人税額等控除することとしており,前記譲渡時において,一般に通常の取引における当事者の合理的に合致するものとして,前記法人税基本通達9−1−14(4)にいう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきであり,このような価額によって株式の価額を評価し,これを前提に法人の収益の額を算定することは,法人税法の解釈として合理性を有するとして,前記非上場会社の株式の価額を評価するに当たっては,いわゆる時価純資産価額方式によって評価すべきであり,かつ,その際,法人税額等相当額を控除すべきであるとした事例
3 同族会社が,その子会社が新たに発行する株式全部を前記同族会社の関連会社に著しく有利な価額で割り当てることによって,前記同族会社が保有していた前記子会社の株式の資産価値を前記関連会社に移転して,法人税法22条2項に規定する無償による資産の譲渡を行った場合において,当該譲渡の対象となった子会社の資産の額を算定するため,子会社が株式を保有する非上場会社(甲社)の保有に係る非上場会社(乙社)の株式の価額を評価するに当たり,当該株式は,財産評価基本通達(平成15年課評2−15,課資2−5,課審5−9による改正前)188(1)にいう「同族株主のいる会社の株主のうち,同族株主以外の株主の取得した株式」に該当し,前記通達及び財産基本通達(平成10年課評2−5,課資2−240による改正前)186−2においてはいわゆる配当還元方式により評価すべきこととなるが,乙社の株式の持株割合の状況等に照らし,当該方式により評価すると著しく不合理な結果を生じさせて課税上の弊害をもたらす場合に当たり,また,当該株式は,非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買事例がなく,その公開の途上になく,かつ,前記非上場会社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなかったと認められるから,いわゆる時価純資産価額方式によって評価すべきであるとし,また,甲社の純資産価額の算定において法人税額等相当額を控除するから,乙社の純資産価額については重ねて法人税額を控除することなく算定すべきであるとした事例
4 同族会社が,その子会社が新たに発行する株式全部を前記同族会社の関連会社に著しく有利な価額で割り当てることによって,前記同族会社が保有していた前記子会社の株式の資産価値を前記関連会社に移転して,法人税法22条2項に規定する無償による資産の譲渡を行った場合において,当該譲渡の対象となった子会社の資産の額を算定するため,子会社の保有する非上場会社の株式の価値を評価するに当たり,当該株式は,財産評価基本通達(平成15年課評2−15,課資2−5,課審5−9による改正前)188(1)にいう「同族株主のいる会社の株主のうち,同族株主以外の株主の取得した株式」に該当し,前記通達及び財産基本通達(平成10年課評2−5,課資2−240による改正前)186−2においてはいわゆる配当還元方式により評価すべきこととなるが,当該方式により評価することが著しく不合理な結果を生じさせるなど課税上の弊害をもたらす場合に当たり,また,前記非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買事例がなく,その公開の途上になく,前記非上場会社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなかったと認められるから,いわゆる時価純資産価額方式によって評価するとし,企業の継続を前提とした価値を求めるべきであることなどからすれば,法人税額等相当額を控除すべきでないとした事例

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