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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)85

事件名

 各所得税更正処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成13年(行ウ)第47号(以下「第1事件」という。),同第209号(以下「第2事件」という。),平成16年(行ウ)第173号(以下「第3事件」という。),平成17年(行ウ)第341号(以下「第4事件」という。))

裁判年月日

 平成19年4月25日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 平成11年分から同14年分までの所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益及び同社から付与されたリストリクテッド・ストックに係る株式取得益(一定の制限期間中は譲渡することができないとされた株式の制限解除時の当該株式の時価と付与時の取得価額との差額相当額の利益)をいずれも一時所得として申告した者が,同権利行使益及び株式取得益がいずれも給与所得に当たるとして増額更正処分とともにされた各過少申告加算税賦課決定処分について,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとしてした取消請求のうち,平成11年分から同13年分までの分について認容され,平成14年分について棄却された事例

裁判要旨

 平成11年分から同14年分までの所得税の確定申告において勤務先の日本法人の親会社である外国法人から付与されたストックオプションの権利行使益及び同社から付与されたリストリクテッド・ストックに係る株式取得益(一定の制限期間中は譲渡することができないとされた株式の制限解除時の当該株式の時価と付与時の取得価額との差額相当額の利益)をいずれも一時所得として申告した者が,同権利行使益及び株式取得益がいずれも給与所得に当たるとして増額更正処分とともにされた各過少申告加算税賦課決定処分について,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとしてした取消請求につき,外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与されたストックオプションについては,かつてはその権利行使益の所得区分を一時所得として取り扱う例が多かったところ,平成10年ころからその取扱いを変更し,給与所得として統一的に取り扱うようになったが,その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく,平成14年6月の所得税基本通達の改正によって初めて変更後の取扱いを通達に明記したのであるから,少なくとも平成14年6月までの間は,納税者において,前記ストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し,その見解にしたがって申告したとしても,それには無理からぬ面があり,それをもって納税者の主観的な事情に基づく単なる法律解釈の誤りに過ぎないということはできないとした上,平成11年分から平成13年分までの各申告において,前記納税者が,前記権利行使益を一時所得として申告し,前記権利行使益が給与所得に当たるものとしては税額の計算の基礎としなかったことについて,真に同人の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の制度趣旨に照らしても,なお,同人に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるというのが相当であるから,前記納税者が,前記各年分の所得税の確定申告又は修正申告において,前記権利行使益を一時所得として申告したことにつき,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるものというべきである一方,課税庁は,平成14年6月には,前記基本通達の改正により,平成14年分の所得税の確定申告時までに,ストックオプションの行使に係る権利行使益を給与所得として課税するという取扱いをすることを明らかにしてこれを周知させ,これが定着するよう必要な措置を講じていたのであるから,前記納税者は,課税庁の所得区分に関する見解,取扱いの変更が基本通達の改正により明記され,これが周知されたことを認識しつつ,あえてこれと異なる主観的な法律見解を採用して平成14年分の所得税の確定申告を行ったものであると認められ,前記納税者には,課税庁により明示された法律見解に従い前記権利行使益について給与所得として申告することに何ら客観的障害があったとはいえないから,同人の見解が採用されずに更正処分がされたとしても,同人の責めに帰することのできない客観的な事情があるとはいえず,同人に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるとまではいえないから,平成14年分の所得税の確定申告については,前記権利行使益につき適正な申告をしなかったことに「正当な理由」があったということはできないとして,前記各過少申告加算税賦課決定処分取消請求のうち,平成11年分から同13年分までの分について認容し,平成14年分について棄却した事例

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