裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成17(行ウ)46
- 事件名
所得税更正処分取消請求事件
- 裁判年月日
平成19年6月22日
- 裁判所名
福岡地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
名目上は債務者であるが,実質的には連帯保証人と認められる者の相続人が,当該債務の返済のために土地を譲渡し,所得税法64条2項が適用されるとして確定申告をした場合に,同項の適用を否定してされた更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分が,前記返済が「保証債務を履行するため資産の譲渡があつた場合」に当たるとして,取り消された事例
- 裁判要旨
名目上は債務者であるが,実質的には連帯保証人と認められる者の相続人が,当該債務の返済のために土地を譲渡し,所得税法64条2項が適用されるとして確定申告をした場合に,同項の適用を否定してされた更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分につき,同項にいう「保証債務を履行するため資産の譲渡があつた場合」とは,一般に,保証債務を履行するため資産を譲渡し,社会通念上相当な期間内にその譲渡代金でその保証債務を履行した場合又は保証債務を代物弁済した場合における資産の譲渡をいうものと解され,保証債務の履行を他からの借入金で行い,その後,その借入金を返済するために資産を譲渡したような場合には,前記資産の譲渡は原則としてこれに該当しないと解されるが,資産の譲渡に長期間を要するような場合において,やむを得ず借入金でその保証債務を履行した後に,社会通念上相当な期間内に資産を譲渡して借入金を返済する場合等,実質的にみて保証債務の履行のための資産の譲渡と認められるような場合については,例外的に同項の特例が適用されると解するのが相当であるとした上,前記の者は,保証債務を履行するために前記土地を売却することをあらかじめ合意した上で,売却先から保証債務の弁済資金相当額を売買代金の一部前払として支払を受けて,翌日,これを同弁済に充てたが,経理上は,売却先からの借入金で保証債務を履行し,その約1年半後に前記土地を譲渡して,譲渡代金と借入金とを相殺したものであるところ,保証債務の債権者から早期の返済を強く求められていたという状況下において,前記土地の売却を前提に保証債務を履行したものであり,評価額の算定や他の担保権者との交渉に時間を要したのであるから,前記の者がいったん借入金により保証債務を履行したのはやむを得ない措置というべきであり,また,その後,前記土地の売却までに1年半を要したのは,評価額の算定や担保権者との交渉に加え,前記の者の死亡に伴う遺産相続の処理に手間を要したためであったと解されるから,前記譲渡は,実質的にみて「保証債務を履行するため資産の譲渡があつた場合」に当たるとして,前記各処分を取り消した事例
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