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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)166等

事件名

 保険医療機関指定取消処分差止等請求事件

裁判年月日

 平成20年1月31日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 保険医療機関の指定を受けた歯科医院の開設者であり,かつ保険医の登録を受けた歯科医師らがした,健康保険法80条に基づく保険医療機関指定取消処分及び同法81条に基づく保険医登録取消処分の差止請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 保険医療機関の指定を受けた歯科医院の開設者であり,かつ保険医の登録を受けた歯科医師らがした,健康保険法80条に基づく保険医療機関指定取消処分及び同法81条に基づく保険医登録取消処分の差止請求につき,行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害」とは,それを避けるために事前救済を認める必要がある損害をいうと解するべきであり,当該損害がその処分後に執行停止を受けることにより避けることができるような性質のものであるときは,「重大な損害」には該当しないと解すべきところ,この重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たっては,損害の回復の困難の程度を考慮し,損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案すると解すべきであるとした上,前記各処分により,前記歯科医院において保険診療を行うことができなくなれば,来院する患者数は大幅に減り,保険診療はもとより,自由診療による収入も大幅に減ることが予想され,また,前記各処分に伴い患者数が大幅に減少した場合,前記歯科医師らが,その開設する歯科医院を,現状の形態のまま維持することは不可能であり,経営が破綻するおそれもあり,さらに,仮に執行停止がされたとしても,執行停止決定までに一定の日数が必要であるから,その間保険診療を行うことができず,これを患者に説明することにより,患者らは,前記歯科医師らが,何らかの不正を行い,処分を受けたことを知ることになり,しかも前記処分がされた場合,地方社会事務局の掲示場に掲示する方法で公示されることなどからすると,歯科医師としての評価や信用が大きく損なわれるといえ,執行停止によっても,失墜した評価や信用が直ちに回復することは考えにくいから,前記各処分によって生じる損害を事後的救済手段によって十分に回復することは困難であり,前記歯科医師らは,前記各処分によって「重大な損害」を受けるおそれがあるというべきであるが,前記歯科医師らが,健康保険法78条1項に定める監査に出頭せず,出頭しなかったことについて正当な理由があるとは認められないから,同人らには,保険医療機関の指定取消及び保険医の登録取消事由が存在するとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

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