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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ウ)603等

事件名

 更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件

裁判年月日

 平成20年2月14日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 土地及び建物を譲渡したことに伴う譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を他の各種所得の金額から控除する,いわゆる損益通算を廃止する旨の租税特別措置法31条1項後段の規定(平成16年4月1日施行)を同年1月1日にさかのぼって適用する旨を定めた所得税法等の一部を改正する法律(平成16年法律第14号)附則27条1項の規定は租税法律主義を定めた憲法の規定に違反すると主張してした,所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 土地及び建物を譲渡したことに伴う譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を他の各種所得の金額から控除する,いわゆる損益通算を廃止する旨の租税特別措置法31条1項後段の規定(平成16年4月1日施行)を同年1月1日にさかのぼって適用する旨を定めた所得税法等の一部を改正する法律(平成16年法律第14号(以下「改正法」という。))附則27条1項の規定は租税法律主義を定めた憲法の規定に違反すると主張してした,所得税の更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消請求につき,租税法規を遡及して適用することにより,納税者が不利益を被る場合,現在の法規に従って課税が行われるとの一般国民の信頼を裏切り,その経済生活における予測可能性や法的安定性を損なうものとして,憲法84条,30条から導かれる租税法律主義に反し,違憲となることがあると解されるところ,租税法規を納税者に不利益に遡及適用する場合であっても,不利益に変更される納税者の納税義務の性質,その内容を不利益に変更する程度及びこれを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し,その変更が合理的なものとして容認されるべきものである場合には,その遡及適用は租税法律主義に反しないものと解されるとした上で,所得税の納税義務が成立するのはその暦年の終了の時であって,その時点では前記租税特別措置法31条1項後段の規定は既に施行されているのであるから,改正法附則27条1項により,これを平成16年1月1日から平成16年3月31日までに行われた譲渡について適用したとしても,納税者の納税義務の内容自体を不利益に変更するものではなく,また,土地等又は建物等の長期譲渡所得について損益通算制度を廃止することは,同所得に分離課税方式が採られていたこととの整合性を図り,かつ,損益通算がされることによる不均衡を解消して適正な租税負担の要請にこたえ得るものとして合理性があり,同措置を全体として早急に実施する必要性があったこと,前記租税特別措置法31条1項後段の規定の適用時期が遅くなればなるほど,それまでの間に含み損を抱えた不動産の安値での売却が促進される具体的な危険があったと認めることができることからすれば,改正法附則27条1項には合理性があり,かつ,平成16年1月1日以降の土地又は建物の譲渡について損益通算ができなくなることを納税者においてあらかじめ予測できる可能性がなかったとまではいえないから,当該変更は合理的なものとして容認されるべきものであり,前記附則27条1項は,租税法律主義に反しないとして,前記請求を棄却した事例

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