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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)375

事件名

 第二次納税義務告知処分取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第290号)

裁判年月日

 平成20年2月27日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 遺産分割協議の結果,法定相続分を超える財産を取得したことが国税徴収法39条が規定する財産の譲渡,処分等により権利を取得したことに当たるとしてされた第二次納税義務の告知処分の取消請求が,棄却された事例 
2 遺産分割協議は,国税徴収法39条の「その他第三者に利益を与える処分」として同条の適用対象となり得る

裁判要旨

 1 遺産分割協議の結果,法定相続分を超える財産を取得したことが国税徴収法39条が規定する財産の譲渡,処分等により権利を取得したことに当たるとしてされた第二次納税義務の告知処分の取消請求につき,共同相続人の間で成立した遺産分割協議について,共同相続人のうちに国税の滞納者が含まれている場合には,当該遺産分割協議は,国税徴収法39条の「その他第三者に利益を与える場合」に該当し,同条の規定の適用対象となり得るものと解すべきであるところ,同条の趣旨は,財産の処分が詐害行為となるような場合には,受益者に対して第二次納税義務を負わせることによって,実質的には民法424条所定の詐害行為の取消しをしたのと同様の効果を得ようとするものではあるが,同条の詐害行為取消権と国税徴収法39条の第二次納税義務の制度とは,その対象及び効果等が異なり,それに応じてそれぞれ異なる適用要件等が条文上定められていると解すべきであることからすると,同条の文言上必要とされていない「詐害の意思」は要件ではないと解すべきであるとした上,国税の滞納者が,滞納している租税債権の徴収を免れて,自分の面倒を看てくれる共同相続人に多くを相続させるため,自分は法定相続分をはるかに下回る財産を相続するにとどめ,大半を前記共同相続人に相続させることにしたという前記遺産分割協議の内容及び背景事情を考慮すれば,前記滞納者の積極財産の減少の結果,前記共同相続人に自己の相続分を超える利益を与えたことになるというべきであり,同遺産分割協議が国税徴収法39条にいう「その他第三者に利益を与える処分」に該当することは明らかというべきであるとして,前記請求を棄却した事例 
2 国税徴収法39条の「その他第三者に利益を与える処分」とは,同法基本通達39条関係5によると,「譲渡,債務の免除以外の処分のうち,滞納者の積極財産の減少の結果,第三者に利益を与えることとなる処分をい」うとされ,同基本通達の逐条解説によると,「譲渡及び債務の免除以外の処分(贈与,売買,債務の免除等の特定の法律行為類型に属さない経済的価値の移転をいう。)で,広く第三者に利益を与えることとなる処分をいう。」とされているところ,遺産分割協議は,相続の開始によって共同相続人の共有となった相続財産について,その全部又は一部を,各相続人の単独所有とし,又は新たな共有関係に移行させることによって,相続財産の帰属を確定させるものであり,いわば相続人の一般財産に組み入れられた財産を譲渡するという実質を持つものということができ,その性質上,財産権を目的とする法律行為であると解すべきであるから,遺産分割協議は,同条の「その他第三者に利益を与える処分」として,同条の適用対象となり得る

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