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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成23(行ウ)32

事件名

 土地所有権移転登記申請却下処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成24年5月30日

裁判所名

 京都地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 相続人に対する特定遺贈によって生ずる農地の権利移転についての農地法(平成23年法律第105号による改正前)3条1項の許可の要否
2 農地の特定遺贈を受けた相続人による所有権移転登記申請に対して登記官がした却下処分の取消し及び同申請に基づく登記の義務付けを求める各請求が,前者につき認容され,後者につき棄却された事例

裁判要旨

 1 農地法(平成23年法律第105号による改正前。以下同様)3条1項12号,16号,農地法施行規則(平成23年農林水産省令第62号による改正前)18条5号は,遺産分割,特別縁故者への相続財産の分与及び包括遺贈について,人為的な権利移転であり農地の保全上は望ましくないものも含まれているにもかかわらず,その実質が相続による権利移転と異ならないかこれに準ずるものであることに鑑みて,その規制を差し控えているものと解されるところ,相続人に対する特定遺贈によって生ずる農地の権利移転は,実質的には遺産分割による権利移転と異ならないといえるから,仮に受遺者が非営農者であったとしても,当該農地に係る受遺者への権利承継は私有財産制の下では是認せざるを得ないものであり,これを農地法による規制にかからしめることは相当ではないし,また,このような場合に農地法3条1項の許可を要するとすることは,特定の不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言による農地の権利移転の場合には同項の許可が必要でないことを前提に,登記実務上も許可書の添付を要しないものとされていることと対比して,合理的根拠を欠くことからすれば,相続人に対する特定遺贈によって生ずる農地の権利移転については,農地法3条1項の許可を要しない。
2 農地の特定遺贈を受けた相続人による所有権移転登記申請に対して登記官がした却下処分の取消し及び同申請に基づく登記の義務付けを求める各請求につき,前記却下処分は,前記申請には農地法(平成23年法律第105号による改正前。以下同様)3条1項所定の許可に係る許可書の添付がないことの他に,登録免許税の不足及び登記識別情報の不提供という追完可能な不備があるが,前記許可書がない以上,仮にその余の不備が補正されたとしても申請を受理する余地はないとの前提でされたものであるところ,相続人に対する特定遺贈によって生ずる農地の権利移転については,農地法3条1項の許可を要しないと解されるから,その余の不備について補正の機会を与えずにされた前記却下処分は違法であるとして,前記取消請求を認容する一方,前記申請には,登録免許税の不足及び登記識別情報の不提供という補正を要すべき不備がある以上,登記官が登記の実行をすべきであることがその根拠規定から明らかであるとは認められないし,登記の実行をしないことがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認めることもできないとして,前記義務付け請求を棄却した事例

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