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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成23(行コ)165

事件名

 行政文書不開示決定取消請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成21年(行ウ)第198号)

裁判年月日

 平成24年11月29日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 大阪労働局管内の各労働基準監督署長が,脳血管疾患及び虚血性心疾患等に係る労災補償給付の支払請求に対して支給決定をした事案の処理状況を把握するために作成している処理経過簿中の,被災労働者が所属していた事業場名の記載が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条1号本文,同条2号イ及び同条6号柱書所定の各不開示情報に該当し,同条1号ただし書ロ及び同条2号ただし書所定の各除外事由に該当しないとされた事例

裁判要旨

 大阪労働局管内の各労働基準監督署長が,脳血管疾患及び虚血性心疾患等に係る労災補償給付の支払請求に対して支給決定をした事案の処理状況を把握するために作成している処理経過簿中の,被災労働者が所属していた事業場名の記載につき,事業場名が開示されれば,当該被災労働者の近親者ばかりでなく,同僚や取引先関係者も,その保有し入手しうる情報と事業場名とを併せ照合することにより,当該被災労働者個人を識別することができるから,当該情報は行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条1号本文所定の不開示情報に該当し,また,社会的には,脳心疾患に係る死亡事案で労災認定がされたという事実だけで,特段の留保を付さず「過労死」あるいは「ブラック企業」という否定的評価をもって,そのような企業への就職を避けるべきであるという言説が紹介されていること,当該企業の製品の不買を言明する者が存在する等の事情からすると,脳心疾患について労災認定を受けた労働者が所属していた企業名を公表することによる当該企業の社会的評価の低下や業務上の信用毀損については,単なる抽象的な可能性の域にとどまるものではなく,蓋然性の域に達しているものというべきであるから,当該情報は同条2号イ所定の不開示情報に該当し,さらに,事業場名が開示されれば,事業主が不利益をおそれて任意の調査に応じなくなる蓋然性が認められ,その場合,事業主の任意の協力を得る必要が高い労災保険給付事務の性質上,事務又は事業の適正な遂行に実質的な支障を及ぼす蓋然性が認められるから,当該情報は同条6号柱書所定の不開示情報に該当し,他方,事業場名の開示が当該企業等の労働者の生命・身体の保護に資するという具体的な関係は認められないから,同条1号ただし書ロ及び同条2号ただし書所定の各除外事由には該当しないとした事例

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