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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成23(行ウ)698等

事件名

 法人税更正処分等取消請求事件

裁判年月日

 平成26年3月18日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の意義
2 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」の意義
3 適格分割に関する要件(法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)2条12号の11の規定に基づき定められた法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)4条の2第6項1号に規定する「当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれている場合」という要件)を形式的には充足せず非適格分割となるように計画された新設分割が同法132条の2にいう「その法人の行為(中略)で,これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当し,同条の規定に基づき否認することができるとされた事例

裁判要旨

 1 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは,①同法132条と同様に,取引が経済的取引として不合理・不自然である場合のほか,②組織再編成に係る行為の一部が,組織再編成に係る個別規定の要件を形式的には充足し,当該行為を含む一連の組織再編成に係る税負担を減少させる効果を有するものの,当該効果を容認することが組織再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣旨・目的に反することが明らかであるものも含む。
2 法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)132条の2にいう「その法人の行為又は計算」とは,法人税につき更正又は決定を受ける法人の行為又は計算のほか,当該法人以外の法人であって同条各号に掲げられているものの行為又は計算も含む。
3 適格分割に関する要件(法人税法(平成22年法律第6号による改正前のもの)2条12号の11の規定に基づき定められた法人税法施行令(平成22年政令第51号による改正前のもの)4条の2第6項1号に規定する「当事者間の完全支配関係が継続することが見込まれている場合」という要件)を形式的には充足せず非適格分割となるように計画された新設分割であっても,一連の組織再編成の計画を全体としてみると,「移転資産に対する支配」が継続しているか否かの指標とされる「当事者間の完全支配関係」が一時的に切断されるが短期間のうちに復活することが予定されており,実質的にみて,分割会社による「移転資産に対する支配」が継続する内容の分割であると評価されること,分割の態様が,分割承継法人にとって,事業上の必要性よりも,企業グループ全体での租税回避の目的を優先したものであると評価されること,一連の組織再編成の計画において当該新設分割に引き続いて行われることが予定されていた行為(分割法人が保有する分割承継法人の発行済株式全部の譲渡)はその事業上の必要性が極めて希薄であったこと,一連の組織再編成に関与する法人において当該新設分割が非適格分割とは認められない可能性が相当程度あることを認識していたことなど判示の事情の下においては,同号による税負担減少効果を容認することは,上記各条項が設けられた趣旨・目的に反することが明らかであるから,当該新設分割は,同法132条の2にいう「その法人の行為(中略)で,これを容認した場合には,(中略)法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当し,同条の規定に基づき否認することができる。

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