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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成26(行ウ)114

事件名

 所得税納税告知処分取消請求事件

裁判年月日

 平成28年5月19日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 日本国内にある不動産を譲渡した者が所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)2条1項5号の非居住者に該当するか否かについて判断した事例
2 日本国内に住所があると説明して住民票を提出するなどしていた売主に対する不動産の売買代金の支払につき,買主である不動産会社が所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)212条1項に基づく源泉徴収義務を負うか否かについて判断した事例

裁判要旨

 1 日本国内にある不動産の売主がアメリカ合衆国の国籍及び社会保障番号を取得しており,同国発給の旅券を用いて日本に入国していること,日本での滞在期間が1年の半分に満たず,アメリカ合衆国にある住居において長男と生活していたことなどの事情に鑑みれば,日本の住民票等において日本国内に住所があるとされているとしても,その生活の本拠は,アメリカ合衆国内の住居にあったというべきであり,上記不動産の譲渡対価の支払日まで1年以上日本国内に居所を有していたということもできない以上,上記売主は,同日において,所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)2条1項5号の非居住者であったというべきである。
2 所得税法(平成26年法律第10号による改正前のもの)2条1項5号の非居住者である売主に対し,日本国内にある不動産の譲渡対価を支払う以上,買主である不動産会社は,同法212条1項に基づく源泉徴収義務を負っていたというべきであり,住民票等の公的な書類に上記売主の住所が日本国内にある旨記載されているなどの事情があるとしても,上記売主が約1か月にわたりアメリカ合衆国に帰国して,以前に同国で生活していた旨を担当者に対して説明していたこと,上記売主が担当者に対して譲渡対価を26口に分割して同国所在の銀行の18口座に振り込むように依頼していたこと,譲渡対価の送金依頼書には同国内の住所が記入されていたことなど判示の事実関係の下においては,前記会社が,売主が非居住者であるか否かを確認すべき注意義務を尽くしたということはできず,その源泉徴収義務を否定すべき理由はない。

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