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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成20(行ウ)150

事件名

 特別報酬支給差止等請求事件(住民訴訟)

裁判年月日

 平成22年9月3日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 (1)市庁舎内の部署等に勤務する職員,(2)パート保育士,(3)市立保育園の調理員,(4)市立小,中学校の給食調理員,(5)上下水道部に勤務する職員並びに(6)市立病院に勤務する事務職員,看護師,看護助手,薬剤師,社会福祉士及び社会福祉主事が,いずれも地方公務員法3条3項3号にいう特別職に当たらないとされた事例
2 (1)市庁舎内の部署等に勤務する職員,(2)パート保育士,(3)市立保育園の調理員,(4)市立小,中学校の給食調理員,(5)上下水道部に勤務する職員並びに(6)市立病院に勤務する事務職員,看護師,看護助手,薬剤師,社会福祉士及び社会福祉主事が,(6)の職員のうち事務職員及び看護師を除き,いずれも地方自治法204条1項又は和泉市企業職員の給与の種類及び基準に関する条例(昭和44年和泉市条例第5号)2条1項にいう常勤の職員に当たらないとされた事例
3 市の職員らに対して,和泉市職員の給与に関する条例(昭和38年8月2日和泉市条例第16号(平成21年和泉市条例第5号による改正前))に基づき,平成19年度の夏季と年末において特別報酬の名目でなされた金員の支給が,地方自治法204条の2にいう給与条例主義に違反するなどして違法である場合において,前記条例を改正する条例の制定により前記違法性がさかのぼって治癒されるとされた事例

裁判要旨

 1 地方公務員法3条3項3号にいう特別職に該当するかどうかにつき,任命権者の意思や辞令等の表示に加えて,客観的な職務の内容及び性質,勤務態様や勤務条件等を総合的に考慮して判断すべきところ,(1)市庁舎内の部署等に勤務する職員,(2)パート保育士,(3)市立保育園の調理員,(4)市立小,中学校の給食調理員,(5)上下水道部に勤務する職員並びに(6)市立病院に勤務する事務職員,看護師,看護助手,薬剤師,社会福祉士及び社会福祉主事は,いずれも,勤務担当部署のほかの一般職の常勤職員らとほぼ同等の勤務環境において,上司の指示を受けて同様の職務に服していることがうかがわれ,その職務が,客観的にみて,勤務担当部署のほかの一般職の常勤職員と比較して,一定の学識,技能又は経験等が必要であり,職階制や成績主義等の同法の定める一般的規定を適用することにつき不都合があるような性質のものであると直ちに評価することは困難であるなどとして,前記職員らはいずれも同法3条3項3号にいう特別職に当たらないとした事例
2 地方自治法204条1項又は和泉市企業職員の給与の種類及び基準に関する条例(昭和44年和泉市条例第5号)2条1項にいう常勤の職員とは,その勤務の態様に照らして当該勤務が当該職員及びその家族の生計を支えるいわゆる生活の糧を得るための主要な手段と評価し得るような職務に従事する職員をいい,そのような職員に当たるかどうかについては,当該職員の任用形式のみならずその職務の内容及び性質等をも勘案し社会通念に従って決すべきものと解されるところ,市の非常勤職員の任用に関する内部基準である要綱によれば,非常勤職員の勤務時間は週当たり30時間を超えないものとされており,その趣旨は,国家公務員において,常勤職員の1週間当たりの勤務時間40時間(一般職の職員の勤務時間,休暇等に関する法律(平成20年法律第94号による改正前)5条1項)の4分の3である30時間を超えない勤務時間の職員を非常勤職員としていること(人事院規則15−15)を踏まえ,常勤職員と非常勤職員との勤務時間の差を規定したものと解されるほか,1週間当たりの勤務時間数が30時間を超えるような態様の職員は,社会通念に照らしても,当該勤務が当該職員及びその家族の生計を支えるいわゆる生活の糧を得るための主要な手段となっているのが通常であることにもかんがみれば,上記要綱の規定は,常勤非常勤を区別する基準として一応の合理性があるというべきで,1週間当たりの勤務時間数が30時間を超えない職員については,特段の事情がない限り,非常勤職員に該当するものと認めるのが相当であるとした上,(1)市庁舎内の部署等に勤務する職員,(2)パート保育士,(3)市立保育園の調理員,(4)市立小,中学校の給食調理員,(5)上下水道部に勤務する職員並びに(6)市立病院に勤務する事務職員,看護師,看護助手,薬剤師,社会福祉士及び社会福祉主事は,(6)の職員のうち事務職員及び看護師を除き,いずれも1週間当たりの勤務時間数が30時間を超えず,上記特段の事情も認められないから,常勤の職員に当たらないとした事例
3 市の職員らに対して,和泉市職員の給与に関する条例(昭和38年8月2日和泉市条例第16号(平成21年和泉市条例第5号による改正前)。以下「旧条例」という。)に基づき,平成19年度の夏季と年末において特別報酬の名目でなされた金員の支給が,地方自治法204条の2にいう給与条例主義に違反するなどして違法である場合において,前記金員の支給後,和泉市職員の給与に関する条例(昭和38年8月2日和泉市条例第16号(平成21年和泉市条例第5号による改正後)。以下「新条例」という。)が制定され,新条例において,一般職の非常勤職員には報酬のみを支給することとされ,かつ,旧条例の規定に基づいて新条例の施行日の前日までの勤務について支給された非常勤職員の給与(特別報酬その他給与の性格を有する一切の給付を含む。)は,新条例の規定により支給された報酬及び費用弁償とみなすと規定された場合につき,給与条例主義を定めた法律の規定の趣旨等にかんがみると,普通地方公共団体の職員に対し条例に基づかない給与その他の給付の支給が行われた場合において,その後に条例において当該支給の根拠となる規定を設けるとともに,既に行われた支給について当該根拠規定に基づいて支給されたものとみなすと定めることにより,当該支給行為自体を是認し,これをさかのぼって適法なものとすることは,職員の権利保障の観点からは,職員の利益になることであって制限すべき理由はなく,また,議会による民主的統制の観点からは,事後的ではあるにせよ議会の承認を得ることで民主的統制の要請を満たすものであって,直ちに給与条例主義の趣旨を没却するものということはできず,このような追認条例も有効と解されるなどとして,新条例の制定により前記違法性がさかのぼって治癒されるとした事例

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