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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成21(行ウ)465

事件名

 総合設計許可処分等取消請求事件

裁判年月日

 平成22年10月15日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 都知事が建築基準法59条の2第1項に基づいてした総合設計許可の取消しを求める訴えにつき,前記許可に係る建築物の近隣に事務所を置く宗教法人の原告適格が,否定された事例

裁判要旨

 都知事が建築基準法59条の2第1項に基づいてした総合設計許可の取消しを求める訴えにつき,前記宗教法人は地域における重要な景観拠点とされ,周辺地域における景観の価値は,人々の歴史的又は文化的環境を形作り,豊かな生活環境を構成するものとして一定の客観的価値を有することは否定することができないが,景観利益は,景観の性質,態様によっても異なり得るし,社会の変化に伴って変化し得るものであって,景観(利益)阻害の有無や程度も主観的な価値判断に依拠する部分が大きく,また,連続かつ無限定な広がりを有し得る周辺地域の居住者や来訪者等の不特定多数者からの眺め,風景をその対象とするものであり,客体の面からも主体の面からも処分の結果が直接影響を及ぼすことになる範囲が性質上当然に特定されるものではなく,法律上保護すべき範囲が必ずしも明白ではないという景観利益の内容,性質等からすれば,処分を定めた行政法規及びその関連法令により,保護すべき景観の内容,範囲,保護の態様等が具体的にうかがわれることになるのでなければ,個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解することは困難であるとした上で,同項は,保護すべき具体的景観の範囲,具体的な保護の態様等を特に定めておらず,「市街地の環境の整備改善に資する」という観点からの抽象的一般的な規制をするにとどまり,また,景観法は,景観計画を定める場合に住民の意見を反映させることを要求し,住民による景観計画策定等の提案を認めているが,前記許可をするか否かの判断において,景観計画について具体的に考慮すべきことを定める法令の規定はなく,前記許可に当たって景観計画区域(予定区域)内の住民等の景観利益を保護すべきものとする趣旨などをうかがうことはできず,同項は,一般公益としての景観利益を保護することをもって環境の整備改善を図ろうとするにとどまり,一定範囲の地域住民の具体的な景観を享受する利益を個別的に保護する趣旨を含むものとは解されないとして,前記許可に係る建築物の近隣に事務所を置く宗教法人の原告適格を否定した事例

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