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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成22(行コ)17

事件名

 保有個人情報不開示決定処分取消等請求控訴事件(原審・札幌地方裁判所平成21年(行ウ)第28号)

裁判年月日

 平成23年3月10日

裁判所名

 札幌高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 労働基準監督署長が業務災害に関する障害等級の認定のため医師にした照会に対する回答の記載のうち医師の署名印影及び障害残存の理由に係る各情報,並びに医師が労働基準監督署長に提出した意見書の記載のうち残存障害の評価に係る情報等が,いずれも行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律14条7号所定の不開示情報(事務事業情報)に当たるとされた事例
2 業務災害に関する障害等級の認定のための資料として労働基準監督署長に提出された書面の記載のうち心理検査の結果についての検査者の意見が,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律14条7号所定の不開示情報(事務事業情報)に当たるとされた事例

裁判要旨

 1 労働基準監督署長が業務災害に関する障害等級の認定のため医師にした照会に対する回答の記載のうち医師の署名印影及び障害残存の理由に係る各情報,並びに医師が労働基準監督署長に提出した意見書の記載のうち残存障害の評価に係る情報等につき,障害等級の認定に当たっては,医師の意見が重要な資料となるが,その意見の内容には,保険給付の請求者側に有利なものも不利なものもあり得るところであり,医師としての専門的知見に基づく評価,判断を含む意見が開示されれば,開示を受けた者が,自己に不利な意見を述べた医師に対して,単なる質問や説明を求めるにとどまらず,当該意見に対する不満や苦情を述べたり,さらには医師にとってはいわれのないひぼう中傷を行うことも十分に考え得ることからすれば,将来において,労働基準監督署長が同種の意見を求めた際に,医師がひぼう中傷を恐れて,診断や意見を述べることを拒否したり躊躇したり,保険給付の請求者側に不利になるような情報の提供や意見を述べなくなったりする可能性がなお十分に認められ,その結果,労災認定を公正かつ適正に行うために必要不可欠な医学的な意見を収集することが困難となって,保険給付事務の適正な遂行に実質的な支障を及ぼす蓋然性があり,また,医師の氏名等が開示されると,ひぼう中傷などを行う相手方が確実になることによって,前記の蓋然性が増すなどとして,前記各情報は,いずれも行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律14条7号所定の不開示情報(事務事業情報)に当たるとした事例
2 業務災害に関する障害等級の認定のための資料として労働基準監督署長に提出された書面の記載のうち心理検査の結果についての検査者の意見につき,前記心理検査の結果についての意見には,保険給付の請求者側に有利なものだけでなく不利なものもあり得るところ,これらの情報が開示されることとなると,開示を受けた者が,自己に不利な意見を述べた医師に対して,いわれのないひぼう中傷を行うことも十分に考え得ることからすれば,将来において,労働基準監督署長又は労働基準監督署長から意見を求められた医師が心理検査を行う者に同種の意見を求めた際に,検査者がひぼう中傷を恐れて,診断や意見を述べることを拒否又は躊躇し,保険給付の請求者側に不利になるような情報の提供や意見を述べることを行わなくなる可能性が十分に認められ,その結果,労災認定を公正かつ適正に行うために必要不可欠な医学的な意見を収集することが困難となり,保険給付事務の適正な遂行に実質的な支障を及ぼす蓋然性があるとして,前記情報は,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律14条7号所定の不開示情報(事務事業情報)に当たるとした事例

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