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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成23(行コ)100

事件名

 不作為違法確認等請求,地位確認請求控訴事件

裁判年月日

 平成23年12月7日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 区長による住民基本台帳法22条1項に基づく転入届の不受理処分に対する,適法な審査請求に対する裁決を経ない取消しの訴えが,行政事件訴訟法8条2項3号にいう「正当な理由」があるとして,適法とされた事例
2 市町村の境界線上に位置する区分所有建物に居住し一方の市に住民登録をしていた者による他方の市の区長に対する住民基本台帳法22条1項に基づく転入の届出の不受理処分が,適法とされた事例

裁判要旨

 1 区長による住民基本台帳法22条1項に基づく転入届の不受理処分に対する,適法な審査請求に対する裁決を経ない取消しの訴えにつき,前記不受理処分は区の担当職員により転入届を返還して口頭で行われたものであり,その際,同職員は,同区に住民登録することができないことは伝えたものの,これが転入届の不受理処分に当たることは説明せず,不受理処分がされたことを明確に確認できる書面等も交付しなかったこと,届出人は前記不受理処分の際,不服申立てができることやその方法等について教示を受けていないこと,同人が70歳近い一人暮らしの格別法律の専門的知識がない一般人であることを考慮すれば,同人が,前記不受理処分を受けて,不受理処分がされたのかそれとも転入届の提出がなかったものと扱われて返還されたものなのか明確に認識できず,前記不受理処分に対する審査請求をせずに,前記不受理処分の取消しを求めて訴えを提起したこともやむを得ないものというべきであるから,行政事件訴訟法8条2項3号にいう「正当な理由」があると認められるとして,前記訴えを適法とした事例
2 市町村の境界線上に位置する区分所有建物に居住し一方の市に住民登録をしていた者による他方の市の区長に対する住民基本台帳法22条1項に基づく転入の届出の不受理処分につき,同法上の「住所」とは各人の生活の本拠をいうものと解され,一棟の集合住宅の中に複数の部屋がある場合であっても,それぞれの部屋が独立して排他的に使用されている場合には,各部屋ごとに個々の建物として取り扱い,異なる住所を定めるのが相当であるとした上,前記区分所有建物は生活のための諸設備を備えた独立の建物といえるところ,同区分所有建物のある一棟の建物全体の集合エントランスは後者の市側に位置するが,同区分所有建物自体は両市の境界線上に位置し,その玄関及び面積の大部分が前者の市側に存在しているという事実を基礎とすると,前記届出人の住所は前者の市にあると認めるのが相当であるとして,前記不受理処分を適法とした事例

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